緊急医療ニーズの原点に立ち返る「ドクターヘリ」の必要性の是非

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フライトナース

2014年8月20日未明に起きた大規模な広島県土砂災害。要請を受けて現場に急行したD-mat(日本における災害時派遣医療チーム)の医師によれば、「(今回の土砂災害は)土砂に既に埋まってしまったか、避難したかに大別され、緊急医療ニーズはあまりなかった」と語っている。
そんな広島県にドクターヘリが導入されたのは意外にも2013年5月と全国的にみても遅い事例だ。

2008年7月に1stシーズンが、2010年1月に2ndシーズンが放映されたフジテレビ系列ドラマ「コードブルー ドクターヘリ緊急救命」。劇中は主にフライトドクターに焦点が当たっているが、本書ではフライトナースが主人公。
救急車で2時間かかる事故現場に15分で到着。全国で十四か所において運営されているドクターヘリで、2007年度最多の702件の出動件数を記録した静岡県のドクターヘリに搭乗し、フライトドクターとたった2人で現場に向かう看護師・長谷川裕美の活躍を描く。
ドクターヘリの重要性が日本で論じられるようになったきっかけは1995年の阪神・淡路大震災。助けられたはずの命を救う空からの緊急救命をすべきだと、トライアルが重ねられ、12年後の2007年6月に「ドクターヘリ特措法」が施行され、全国的に導入が進められてきた。
順天堂大学医学部付属静岡病院。富士山、御殿場、伊豆半島など、リゾート地の急病者と事故の被害者を、主に救急搬送するドクターヘリは、医師と看護師が事故現場で治療でき、迅速に病院での処置につなぐ。
主人公のフライトナース長谷川は決してバリバリのキャリアナースではない。手術室担当の看護師としてスタートし、おっとりした性格の「私には向いていない」と落ち込みながら、患者と直接会話できる救命病棟の担当に配属された同期を羨ましく思う日々。看護士経験5年が過ぎた頃、「ドクターヘリ」の導入が決まり、フライトナースとして志願し、見事選ばれる。
「初めの頃は本当にこの子で大丈夫なのかな」と思われていた長谷川が迷い、失敗し、「なんのためにフライトナースをするのか」と常に自問自答し続けながら、成長していく姿を描いたノンフィクション。
ドクターヘリで駆け付けたにもかかわらず亡くなった患者を目にしたときの自責の念。一人でも多くの命を救いたいという思いを強くし、ドクターヘリのチームメイトの支えと連携でモチベーションを持続、「経験のなさを知識でカバーしたい」と陰ながら心肺蘇生法「BLS」の資格を取得するなど命の現場の第一線で活躍する看護師としての情熱が伝わってくる。
ヘリを飛ばすには一回につき50万円程度の経費がかかり、その費用は国と県が負担する。
だが長谷川は願う。
「ヘリを呼ぶほどの重症患者ではない『オーバートリアージ』(万が一のために、患者の状態を重めに判定すること)であっても、とにかくドクターヘリを呼んでほしい」と。

フライトナース

フライトナース

  • 長谷川裕美

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