優しくて切ない5つの物語

1577viewssakurakosakurako

このエントリーをはてなブックマークに追加
デッドエンドの思い出

[デッドエンド(英語: dead end)は、行き止まりのこと。転じて先、将来の展望が見えないこと。|Wikipedia|]]

5つのデッドエンドの物語。

幽霊の家

有名ロールケーキ店の岩倉くんと洋食屋の娘の私が結婚したのは、大学時代、岩倉くんが住んでいたボロボロのアパートでそこに住んでいた幽霊を見たあの日があったからだと思う。
敷かれたレールの上を走ることに違和感を覚え、自分の道を探していた若き日の岩倉くんと、兄に敷かれたはずのレールを切望し、手に入れた私。
ギラギラした若い日に、死んでもなおありふれた日常を繰り返す老夫婦の幸せな幽霊を2人とも見ることができたから、年月を経て再会した時、結婚という流れが生まれたんだと思う。

「おかあさーん!」

社員食堂で無差別の毒殺未遂をされた私。
記憶も定かで無い幼少期に父と死別し、母の虐待で祖父母に引き取られて育ったことを今までは気にしないようにして生きてきた。
突然の事件に巻き込まれて、長い不調と周りの人たちの反応の中で、今まで自分が心の奥底に閉まってきたものに気づく。
本当は親子で幸せに暮らしたかった。不確かな記憶は母の優しさや愛情がやわらかな色をしている。
でも、その思い出があるから、今がある。何かを昇華させないと人は本当には前には進めない。

あったくなんかない

幼い時に結婚の約束をした小さな男の子がいた。
その子はまことくんといって、大きな和菓子屋の息子だった。
私の家から見えるまことくんと彼のたくさんの家族が暮らす豪邸の灯りは温かく、長く歴史のあるまことくんの家は川のように確かなものに見えた。
一方核家族の私の家は、なんだか不安定で不確かなものな気がした。
しかしある夜、おめかけさんの子供だったまことくんは、本当のお母さんの無理心中に巻き込まれて死んでしまった。
一時期は話題になったものの、まことくんの事件も風化し、まことくんの家は川のようにすべてを流すかのように今までと変わらずそこにあった。
そして大人になった私は、そんなまことくんがあったかさを感じる時間を一緒に過ごせたことをただただ良かったと思う。

ともちゃんの幸せ

静かにゆっくり暮らすともちゃんの人生にもいろんなことが起こる。
お父さんが不倫して出て行ってしまったり、レイプされたり、お母さんが死んでしまったり、でもちょっといいなとおもっていた男の人とゆっくり関係が進展したり。
とても落ち込んでも孤独でも、見守ってくれる存在がいることを知っているからともちゃんはひとりぼっちではない。
ある人は神様というかもしれない。でもその神様は何もしてくれない。助けてもくれない。
ただとても上の方から静かに見守っている。

デッドエンドの思い出

学生時代から付き合っていた婚約者に婚約破棄された私。
全力で心配してくれる家族はいるが、傷つきすぎてその心配や気持ちが痛いので、おじさんのやっているバーの2階でつかの間の一人暮らしをする。
そこで知り合ったのがバーの雇われ店長の西山君。
西山君は幼少期に学者肌の父親に長野の山奥に監禁され、警察に救出された過去を持つ。
その過去ゆえにどこか飄々として、他人と距離を置く。
西山君の子供っぽさとそれでいて冷静な人柄が、傷心の私を癒してまた温かい家に戻る力をくれた。
きっともう会うことはないんだろうけれど、幸せな一瞬として私の中には永遠に残るんだろう。

感想

本当に切なくて痛い物語ばかりです。でも、読み終わったあと、少し救われたような温かい気持ちになります。

デッドエンドの思い出

デッドエンドの思い出

  • よしもとばなな

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く