中国、ネーション・ビルディング、反日。

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人間の叡智 (文春新書 869)

佐藤優の中国論をまとめました。

「敵」をつくりだす国家

中国の現状

  • 大胆に整理して言ってしまうと、中国はいまネーションービルディング(民族形成)をしているということだと思います。これまでの中華帝国の「漢人」とは異なる、中華人民共和国の「中国人」という民族が生まれてきている。これは中国に特殊な現象ではなく、近代化、産業化と民族形成は必ず八ツケージになるものなのです。そこに、極めて成熟した、あるいは老成したナショナリズムをもつ日本が対峙させられてしまっている。

ネーション・ビルディングには、「敵」のイメージが必要

  • 中国は、日本を敵のイメージとして利用しているのです。これは日本にとって迷惑なことです。たとえば中ソ対立当時も以後も、ロシアを敵のイメージにする可能性が相当ありました。ところがロシアはうまくそれを回避し、ロシア以外のところへ行くように誘導したのです。
  • それからアメリカが敵にされる可能性も十分ありました。一九九九年にユーゴスラビアの中国大使館をNATO(主力は米)軍機が誤爆した事件の直後は、中国全土で反米デモが広がり、アメリカ領事館襲撃までありました。ところがこれも収まった。初動段階のナショナリズムだから、どこを敵のイメージにするかは操作可能だったのです。
  • いまになって思うと、日本はこの段階で無策無能でした。自分たちは悪いことをしていないのだからと油断して、あえて対策を講じなかった。そのために敵のイメージが日本に固定されてしまったのです。だから、歴史教科書の問題が解決したと思ったら靖国問題が出て来るし、靖国が終ったと思ったら尖閣問題が出て来るし、尖閣が終ったと思ったらまた南京大虐殺が出て来るしで、きりがない。この現象は`、中国のネーションービルディングが終るまで、つまり敵のイメージに依存しないでも中国人だという感覚が十分つくれるようになるまで、続きます。

中国は新しい帝国になれるのか

中国の難しさ

  • 毛沢東は中国が抱える民族問題に気づいていました。資源は少数民族地域にあるが、人口は漢族の地域に集中している、とはっきり言っています。中国は漢人が「中国人」になったことによって、国民統合に失敗した国家なのです。中国全体を包むような、すなわちウイグル人やチベット人も含めた新中国を建設し、新しい中国人をつくる――このネーションービルディングに失敗しています。それは共産党の中国になる以前の、中華民国をつくるときからの課題であり、失敗なのです。

では中国は帝国をつくっていけるのか。

  • 帝国をつくるには、多様な民族を統合するための神話が必要になるのですが、その神話が見えない。いまのところネーションービルディング神話でやっている。しかしそれではいずれ限界がきます。民族問題や格差問題で、国内で流血が起きる。経済発展に支障をきたすような社会的な混乱や緊張が生じる。

中国のエリート層が鍵を握るのでは?

  • そこで中国は分裂するのか、あるいはあの広大な領域を維持するだけの新しい神話をつくりだせるのか、この先果たして共産党が変容するのか、共産党を捨てて新しいシステムが立つのか、その見通しが全然立だないのです。国家戦略であるとか、国家体制のありかたに関して、中国のエリート層は恐ろしく鈍感で、基準に達していないように見えます。

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