実話を基に書かれた小説。

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ジェームズ・ボンドは来ない (単行本)

島の活気を取り戻すために

ジェームズ・ボンドといえば、言わずと知れた映画『007』シリーズの主人公のコードネーム。
その映画を誘致しようと、活動した少女を中心にお話は進みます。
映画の原作になるかもしれない、と期待されているのは『赤い刺青の男』。
日本を舞台にジェームズ・ボンドが活躍する小説です。
その小説で舞台となっている直島がこのお話での舞台となります。
誘致が成功すれば、島に活気が戻ると信じている島民のひたむきさが印象的でした。

舞台となっている直島は、アートの島、として有名です。
私も何度か訪れたことのある土地ですが、それがなくても景色がとてもきれいです。
緑と海と、海の向こうに連なる瀬戸内の島々。
映画の誘致の展開を描きながら、直島のアート施設が増えていく様子も書かれています。

今、トリエンナーレやビエンナーレなどの芸術祭を行う自治体が増えてきました。
それは、芸術祭を行うことでそれが観光資源となるためです。
けれど、芸術は等しく誰にでも理解されることではない。
特に現代アートとなると、なかなか難しいと思われがちな部分もあります。
そんなことにお金を使うなんて、と思う人だっています。
直島の人たちもそう。
増えていくアート施設に対して、芸術なんて意味分からん、という描写が書かれています。

この本を読んでいて、アートの島として成功するまでの舞台裏を覗いたような気持ちになりました。
主導した側の見た道のり、ではなく、それを受け入れてきた地元の方々の道のり。
その島で暮らしている人たちの気持ち。
島に対する愛着と、都会に対する憧れと。
住民たちが島に活気を取り戻すために選んだ手段はアートではなく映画でした。
今となっては、アートの島として成功していますが、それよりも映画を誘致するという方がよっぽどわかりやすかったのでしょう。
きっと、この小説の舞台が東京や大阪のような都会だったら、誘致活動に対してここまで純粋に盛り上がることはないでしょう。
直島にまた行きたくなりました。

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