家族の歴史を相続する。

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書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト

物語を読み進めるように。

どうして書庫を建てたのか、どのようにして書庫が建っていったのか、それを中心に書いている本で、構成が面白いと思いました。
書庫を建てた学者の松原隆一郎さんがそのいきさつを綴る合間に、書庫を設計した建築家の堀部安嗣さんの視点から進行具合の様子が書かれ、設計をしてみてふと思い浮かんだかのような新しい図書館の姿や建築観が語られます。
この構成は、『つねづね家一軒を設計したら一つの小説が書けると思っていました。』と冒頭で堀部さんが書いていることを意識しているのでしょう。
その言葉の通り、一つの物語を読むように読み進めていけました。

書庫なので本を収めるのが目的なのですが、もう一つ収めるものとして仏壇がありました。
本では仏壇を相続した松原さんの家族の歴史から始まります。
家族の歴史を私たちはどれくらい知っているでしょうか。
両親の出会ったいきさつや、祖父母がどんな風に生きてきたのか、財産を相続するだけでなく、そういう部分も全て相続するのがよいのではないかと松原さんは書いています。
仏壇が自宅にある家も今はどれくらいあるのでしょう。
地方の仏壇のあるその家に住む人がいなくなったら、仏壇はどうなるのでしょう?
簡単に処分していいような代物ではありません。
けれど、自宅には置く場所がありません。
買い換えるとしても、洋室に合うようにデザインされた仏壇は仏壇らしくありません。
きっとそういう悩みを抱えている人って少なくないだろうと思います。

本の中では、その他にも問題提起がなされています。
街の景観について、本との関わり方について、建築に携わる人たちについて。
けれど、小難しいばかりではなくて、書庫の写真や設計図が載せてあるページもいくらかあって、吹き抜けのらせん階段に沿ってずっと本棚が続いていくその佇まいにうっとりとしました。
書斎ってだけでも憧れますが、蔵書が1万冊もあったらもう私設図書館に近いのでしょう。
うらやましいです。

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