魅力的な作品。

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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

最近発売された新作と合わせて楽しむ。

村上春樹さんの長編小説です。

この作品では、主要な登場人物には色の付いた名前が多く付けられています。
そのことについて取り上げている記事など多く見かけましたが、個人的にうまいなぁと思うのは、色彩の入っていない登場人物の名前。
まず多崎つくる。
彼は特定の色彩を持っていないけれど、「多い」という字を付けられている。
つくる自身は最初から最後まで一貫して、自分のことを個性も何もない空虚な存在だと思っているにもかかわらず。
それから彼に順礼を勧めた女性である、木元沙羅。
彼女の名前である沙羅からは、「まっさら」という言葉を連想します。
この二人の人物の名前の付け方に、著者の多崎つくるという人物についての思いと二人のその先の関係がどうなっていくかの予測が含まれているような気がします。

謎が謎のまま残されているというのも印象的でした。
つくると沙羅の関係がどうなるかということも作品の中では触れられていないし、灰田くんはどうしちゃったのかな、とか、白根さんはどうしちゃったのかな、とかその辺りのことは作品の中に記述がありません。
小説を読むときにどうしても、謎が全て解決して
そうだったのかすっきりした!!
というのを求めてしまいがちだけど、現実には、わからないままになっていることの方が多い。
だから、謎のままにされている方が自然なのかもしれない。
そうしてある方が空想する隙間も多いので、それが作品の魅力の一つだろうと思いました。

哲学的な部分も多く、示唆に富んだ作品でした。

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