マンガが青少年に与える「悪影響」には根拠があるのか?

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マンガはなぜ規制されるのか - 「有害」をめぐる半世紀の攻防 (平凡社新書)

序論

1945年敗戦から10年間、カストリ雑誌やゾッキ本の摘発が相次ぐ(刑法175条わいせつ図画頒布)
『チャタレイ婦人の恋人』事件
→これらの場合、刑事裁判で無罪となるものはほぼ皆無

チャタレイ事件地裁判決
わいせつ文書として社会から排除すべきものの基準は通常人の受け止め方を基準とする
未婚の青少年に重点を置かれるべき
→青少年は性衝動に駆られやすく、理性がない、結婚して初めて理性を得る、それまで純潔を保つために性表現から遠ざけるべきという裁判官の極めて個人的価値観によった判示をする

石原慎太郎
太陽の季節を初めとするセンセーショナルな小説をいくつも出した石原慎太郎は当時中央公論等で大人の価値観による批判に反論
→自らが都知事となってからは積極的に有害図書規制を推進

条例改正の経緯

・東京都条例 規制派の主だった会議での発言
性犯罪の増加との因果関係について実証データがなくても規制をするべきという見解
同性愛を変態性欲と同列に扱う差別的発言

問題発言のオンパレード→非公開審議であり、読者・市民も蚊帳の外だったが、議事録の公表によって立ち上がる者も現れた、これに前田(規制派)が揚げ足を取られるなと発言

・児童ポルノ禁止法 サンタフェは児童ポルノか

枝野幸男
自分の家にある写真やらDVDを探し出して捨てるのは非現実的
3号ポルノの恣意的解釈
共謀罪との連動可能性

戦前のエロ・グロ・ナンセンス規制は思想統制に行き着いた

・青少年問題協議会
2010年条例改正案についてのパブリックコメントは1000件以上の批判・反対があり、賛成はわずか数十件であったが、そのこと自体が一般質問の際に公開されなかった

その後の公開での公的資料の引用すら黒塗りにされたものが情報公開手続きで入手できたに過ぎない

改正案の上程
「非実在青少年」の性描写規制
 不健全図書の指定し、指導に従わない業者に勧告や公表
 指定に至らない場合は、R18マークを付する表示図書にする勧告できる

児童ポルノ禁止法 単純所持規制

規制の論理

・表現規制の分別として「わいせつ」か否かと、「児童に有害」か否か

「わいせつ」の定義 チャタレイ事件判決の3要件
「児童に有害」 児ポ法 
→実在児童ではない創作物の処罰の改正案、単純所持処罰の改正案があり、これらの延長戦に条例の「非実在少年」規制の論理がある

児童ポルノ規制の3号ポルノの曖昧性

・青少年条例
「淫行」の定義 結婚を前提なら淫行に当たらない?
わいせつの対象の拡大 DVD、ネット
なぜ新聞やテレビは含まれないのか?→OB政治家の存在

・「有害」図書の指定の方式
個別指定、包括指定、緊急指定
東京都の場合、都職員が10人程、書店やコンビニを回って購入し、指定するかを審議会に諮問
包括指定の場合は、この手続自体が不要で、条件に当てはまっていれば当然に指定

・取り締まり
行政からの警告→改善なし→警察の摘発へ
対象となるかについて、依然判断基準は曖昧
警察庁OBが都庁に赴任し、担当するなど、福祉的なものから取り締まりへ
出版規制ではなく、販売規制であるため、検閲ではなく憲法21条の表現の自由の侵害ではないというのが最高裁の結論

・自主規制
映倫、ビデ倫→事前審査
出版業界→事前審査なし
 出版倫理協議会
 雑誌協会
出倫協は東京都条例に関連し踏み込んだ活動をしている。例えば、指定のための諮問会で意見を述べる等
行政が業界団体を規制の下請けのように使う→自主規制に委ねるという詭弁

■規制の歴史 略

感想

日本の有害図書規制に関する議論。筆者は反対派である。
まずやはり賛成派の主張の科学的根拠による裏づけがないことが問題視されており、一部の大人の既成概念でマンガなどのサブカルチャーを否定している。勿論、通常の少年誌に載るようなマンガはそこまで否定されなくなってきているが、もっとディープなものについては、批判の的となっている。特に性犯罪者などの問題と関連性があると考えられるようであるが、そこまで明確な検証はされていない。
論理的に証明されていないものについて規制してはいけないということはないというのが、賛成派の主張であるが、だとすれば、そこで用いられる規制枠組みや規制対象の選定などについて、慎重にすべきということは当然出てくるだろう。

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