国会の「ねじれ」必要論

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国会改造論 憲法・選挙制度・ねじれ (文春新書 920)

第1章

・民意の暴走を食い止めるための二院制
民主制も、多数派の利益のためのもの、すべての人の共通利益のためではないという点で専制、寡頭制と同じ

・欧州で発展した二院制

・州の代表としての米国上院
『フェデラリスト』・・・民主制のもつ専制に対する対策としての下院の位置づけを指摘

・日本の二院制
政党の党議の拘束が大きいため機能しない

・各国の二院制
米国 上下院の協議会
  非公開の部分が大きい
  各院の代表による協議→各院の採決

仏 協議会へ政府メンバーの参加、修正案の受理に政府の同意が必要

独 両院協議会
  連邦参議院の同意を要する場合があり、同意が得られない場合は連邦参議院・連邦議会・連邦政府のいずれからもが両院協議会を開くことができる

第2章

・時間軸でもねじれ
選挙の改選周期が違うため、その時々の多数派は異なる

・支障をきたす米国議会
予算法案が通らないことはしばしばある

・実は権限の弱い米大統領
一般教書演説等は法的拘束力はない

・仏の大統領制は権限強
特に2000年の改正後、大統領と議会の選挙が重なる(ねじれない)
首相を大統領が任命
議会の時間稼ぎ不可
憲法改正も発議できる

・党議拘束が緩い米国
上院は選出州の支持層に配慮
欧州、日本は党議拘束が強いが、米国は常に両院の交渉が行われ、必ずしも二大政党が対立的な位置づけにならず、近年までねじれが深刻な問題とならなかった

・日本の二院制
参議院の発案は松本丞治
当初米国は州のない日本には一院制を想定
松本によれば、参議院の重要性としてねじれは強く意識されていた

3/2案→説明書→3/6案
3分の2条項は米国の制度を参考
英国の制度は日本には採用されず
3分の2条項も、衆院での60日での再可決ができるものの世界的にみて困難なハードル

・ねじれに苦しむ豪州
日本と同様の米英折衷型
米国と同じく連邦制を導入し、1901年憲法制定時に米国制度も学ぶ

第3章 

・予算と金銭法案は違う
米国は予算について英国の制度に倣えと指示、英国では予算という用語はなく、金銭法案とされる
金銭法案は税や国債発行なども含むが、予算には含まれない
日本では予算について衆議院の優越を認めるも、法案たる税や国債発行については、財政に関する衆議院の優越は強くない

・英国での下院優越の仕組みを日本が知らなかった
1911年議会法1条・2条の理解のみ→実際には憲法習律がある
「財政法案に対する下院の特権」の見落とし
英国では、下院で可決された歳入法案は上院で否決はおろか議決すらしないで成立させてきたという慣習が非常にねじれに強いシステムを作り出していた

・先例集『アースキン・メイ』の不読

第4章

・両院同日選挙が世界標準
チェコ 上下院別々の任期だが、任意の解散権はない
豪州等 同時解散、同時選挙の慣行
米国、スイス 解散権なし

・英国と日本の解散権
日本の7条解散・69条解散
首相が閣議を経ずにできる

英国では国王の拒絶権あり
2011年議会法による首相解散権の原則廃止

・任期途中の解散は世界的に少数派

第5章 

政治腐敗→二大政党制の必要論

・小選挙区制は二大政党を前提としたもの

・小選挙区により合意の文化を壊す
ねじれていても、対決がなく、法案の成立率も高かったが、民主党政権以降は対決姿勢が強まり、法案の成立率は激減

第6章

・財政のねじれだけは許容できない
・中長期的には憲法改正を議論すべき
・二元代表制(首相公選制等)の問題

第7章


感想

先の参院選では「ねじれ解消」の争点を元に、自民与党の圧勝に終わった。しかし、「ねじれ」というのはなくなるべきものであるというのなら、なぜわざわざねじれるような制度を作ったのであろうか。そもそも、過去の政権でも、ねじれ自体はたびたび経験していたはずであり、その際にねじれの問題をどのように対応していたのか。マスコミの誘導に惑わされないために、国会の制度についての知識を過去や、他国との比較によって明らかにした書である。

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