お気に入りの服を着れる幸せ

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しのぶ梅 着物始末暦 (時代小説文庫)

江戸時代、町人たちの人情を描く短編小説

古着物の仕立て直し、染め直し、洗いや染み抜きなどを全て一人でこなしてしまう職人、余一。
二枚目なのに、無愛想。
天涯孤独な身の上で、着物のことだけは人一倍知識が豊富な彼。
その余一を取り巻く人々を描いています。

収録されているのは4話なのですが、基本的にどの話も主人公は違います。
ただ、着物にまつわる思いのあれこれが描かれて、余一がそれに絡んでくる、というのは共通しています。
出て来る登場人物たちは、まだまだ繋がりが細くて、物語が進展していくうちに、少しずつ余一を通して関係が深まっていくのではないかと推察されます。

余一の、着物につまっている思い出を大切にしてくれるところがいいと思います。
いい着物は親子三代着れる。
着物は手入れをし大事に着れば100年ほど保ち、いい物だから自然とそうやって受け継がれていくものだと。
大事に着られているうちに、その着物にまつわる思い出が蓄積されて、色はだんだんあせていっても、輝きは増していく。
彼はそういう着物のよさを知っています。
だから、余一が古着のよさを語る時、ちょっと心が痛みます。
私は一体、どれくらい服を大事にしているだろうか。
今は服1着買うのもピンキリで、私は安い服ばかり着ているので、その1枚1枚に思い入れもなく、ダメになればすぐ捨てて、の繰り返し。
着物のサイクルはそれと全く逆です。
たとえ安い洋服だとしても、機械化で工場生産されているとしても、そこには少なからずその生産に関わっている人がいて、労力がかかっている。
そういうことの有り難みを忘れているような気がします。

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