おひとりさまは女ばかり! おひとりさまの老後の現実

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おひとりさまの老後 (文春文庫)

みんな最後はひとり

結婚してもしなくても、みんな最後はひとりになる。事実、65歳以上の高齢者で配偶者がいない女性の割合は、55%と半分以上。うち、死別が46・1%、離別が3・5%、非婚が3・3%。これが男性だと配偶者がいないのは17%と少数派。80歳以上になると、女性の83%に配偶者がいない。

おひとりさまは女ばかり

2005年の平均寿命は、女性が85・5歳、男性が78・5歳、世界の最長寿国である。平均寿命とはゼロ歳のときの平均余命のことだから、たとえば50歳まで生きのびた実績(つまり、それまでに亡くなったひとがたくさんいるわけだから)をもつひとの50歳時の平均余命はもっと長くなる。「55歳まで生きたから、あと30年ね」とはならないのが、平均寿命というものだ。

長生きすればするほど、女の割合は増える。ゼロ歳のときの出生性比は先進国で女性対男性が約100対105だということがわかっているが、2005年の日本では高齢者になると、65~69歳で52対48、75~79歳で57対43と女性がどんどん増える。85歳以上では72対28、女性5人に男性2人の割合だ。

その結果、ほとんどの高齢者施設では、入居者が圧倒的に女性ばかりということになる。「21世紀はおばあさんの世紀」といわれるゆえんだ。

おかえりなさい、シングルアゲインの女たち

離婚や死別でふたたびシングルになることを「シングルアゲイン」というが、「ずーっとシングル」も「シングルアゲイン」も、なってしまえば結果は同じ。40代後半くらいから、配偶者と離別したり死別したりしてシングルに戻るひとたちが増える。家族のいるひとと、いないひとのライフスタイルはかなりちがうから、一時は「家族持ちって、夫や子どもの話題ばかりでついていけないわ」と思っていた〝ずーっとシングル組〟にとっては、「おかえりなさい、ようこそシングルライフへ」という再会のときである。

「ふたり」が「ひとり」になるとき

おひとりさまになるまでには「ふたり」が「ひとり」になるプロセスがあり、そこには喪失の体験がある。喪失のうちで、もっともダメージが大きいのは配偶者の喪失である。ペットロス症候群なども話題になっているが、それとはくらべものにならない。

仲のよかったカップルにかぎるかと思ったら、そうでもないところが夫婦関係の謎である。カップルのなかでも、とりわけ長いあいだ生活をともにしてきた夫婦は、愛憎ともに縄のごとくないあわされて、式子内親王の塚にまとわりついた定家葛のように、共依存関係になるものらしい。

妻を亡くすと、男はがたがたにくずれる

わたしの両親は、決して仲のよい夫婦とはいえなかったのに、夫の妻に対する依存度はいちじるしく高かった。というより、ほかにどんな選択肢もなかったために、生活も感情もなにもかも妻に依存せざるをえなかったというのが実情であろう。だからつっかい棒がはずれると、がたがたにくずれてしまう。

存命中の母は、「こんなひと、わたしでなければとうていいっしょにやっていけない」とぼやきながら(そう言って、横暴な亭主と別れずにいる妻たちは多い)、あとに残される夫を心配するいっぽうで、「一日でもいいからおとうさんより長生きしてせいせいしたい」と念じていた。

「お願いだから、おかあさんのほうがおとうさんより長生きして」という、わたしたち子どもの祈るような願いもむなしく、彼女はがんで先立ってしまった。あとに残された父の憔悴ぶりからして、これでは父も長くはないだろうと思ったものだ。そのあと父は妻のいないひとり暮らしを10年にわって続けたが、「ママ(妻)を亡くしたボクの人生に、盆も正月もない」と言って、ひきこもり同様の生活を送った。文芸評論家の江藤淳さんが妻に先立たれたあと1年もしないうちに自裁したことが報道されたが、これも愛妻のあと追いをしたというより、心身ともにつっかい棒を失った人生をもてあましたからであろう。

夫婦のふしぎ

この逆の状態は、妻の場合には考えにくい。最近のデータによると、70代で妻のいる男性は、夫のいる女性よりストレスがずっと少なく、同じ年齢で夫のいる女性と夫のいない女性とをくらべると、夫のいない女性のほうがストレスが少ない、という結果が出たそうだ。そりゃそうだろう。にもかかわらず、あんなに憎みあっていたのに、と思われるカップルでさえ、夫を亡くして悲嘆にくれている妻がいるのが夫婦のふしぎというもの。

朝起きてから夜寝るまで顔を合わせて、たとえ会話がなくとも同じ食卓を囲み、同じテレビ番組を見てタレントをくさし、子や孫の喜びやトラブルをともにし、日々の暮らしを紡いできた相手は「空気のような存在」。だが、「空気」だからこそ、なくしたら窒息する。愛も憎しみも関係の深さの尺度。のっぴきならない関係を何十年も続けてきた相手を失えば、喪失感の深さは想像にあまりある。

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