科学的な「ひらめき」の形式とは?

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アブダクション―仮説と発見の論理

アブダクション : 仮説発見・形成の論理

Charles Sanders Peirce(C. S. パース, 1839-1914)

  • 演繹:必然的な論証力をもつ、形式的な性質をもつ論理
  • 帰納:蓋然的な論証力をもつ、経験的な性質をもつ論理
  • アブダクション:きわめて蓋然的な論証力をもつ、発見的な性質をもつ論理

アブダクションとは?

[アブダクションは、仮説形成を説明する方法(process)であり、これこそ、新しい諸観念を導入する唯一の論理的操作(logical operation)である (本書、p. 26)]]

「アブダクションの形式」
驚くべき事実Cが観察される
しかしもしHが真であれば、Cは当然の事柄である
よって、Hが真であると考える理由がある

意外な事実 (C)から説明仮説(H)を考える(遡及理論)

ex. ニュートンによる万有引力の発見……
1. リンゴが落ちる(驚くべき事実C)
(リンゴはなぜいつも垂直に、地球の中心に向かって落ちるのだろうか?)
2. 物体には「引力」が働いているとすれば、リンゴが落下するのは当然だ(説明仮説H)
3. よって、すべての物体には引力が働いていると考える理由がある
(仮説は"暫定的に"採択される)

  • 「引力」の存在は事実Cには含まれていない。仮説的飛躍(この点で、一般化の推論である帰納と異なる)
  • 説明仮説Hは「そのように考えるべき理由がある」「そのように考えるのが理に適っている」というように、合理的な理由や根拠の妥当性、つまり仮説の説得力、もっともらしさ(Plausibility)に支えられている
  • そのため、アブダクションは常に間違う可能性のある論証力の弱い推論である

観察の限界まで帰納を広げてゆくと、推論は仮説の性格を帯びるようになるともいえる

ただし”あてずっぽう”とは異なる → 理にかなった推測に到達するまで熟考を重ね、自己修正的である限りにおいて、アブダクションは論理的に統制された推論としてみなしうる

科学的探究の3つの段階

  • 第1段階:アブダクション……驚くべき現象の観察から、その驚きを解決する説明を与えてくれる仮説を考え出す段階。仮説の採択
  • 第2段階:演繹……(1)仮説を明確にし、(2)仮説の演繹的立証をおこなう段階。予測を導き出す思惟

  • 第3段階:帰納……仮説から導かれたすべての帰結が経験とどれだけ一致するかを確かめる段階。仮説の検証、反証

ex. 海王星の存在を予言したアダムス・ルべリエ

  • 第1段階:天王星の異常な運動という驚くべき事実の発見から、抵抗エーテルの存在、天王星の衛星の存在などといった仮説を検討し、天王星の外側に未知の天体があるという説明がもっともらしいと考えた(ほかに、ニュートンの理論に不備があるという考え方も存在した)。
  • 第2段階:天王星の外側に惑星があるとした場合の未知の天体の軌道要素、位置を予測
  • 第3段階:ガレによる観測により、海王星が発見された(観測事実に照らして仮説の検証をおこなう)
  • 感想

    仮説を「ひらめく」ことは、偶然の思いつきなどといった非合理的行為ではない。C. パースによる仮説発見・形成の論理「アブダクション」を、K. ポパーの仮説演繹法、J. S. ミルの帰納法などと比較しながら読み解いてゆく。

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