軍靴の音が聞こえる戦争準備のための秘密保全法制

4012views飛立知希飛立知希

このエントリーをはてなブックマークに追加
秘密法で戦争準備・原発推進―市民が主権者である社会を否定する秘密保護法

 本書は2013年12月13日に公布後も、特定秘密保護法(以下、秘密保全法)廃止に向けた反対国民大運動の先導者としてこの国の行く末を強く憂い、警鐘を声高に叫ぶ海渡雄一弁護士の著作である。
 著者は今なぜ秘密保全法を可決せねばならなかったのか、情報漏洩防止のためという正論に真っ向から疑義を呈する。1925年に制定された治安維持法の最高刑は10年であったものが、わずか3年後の改正では死刑に変えられた。1985年の中曽根政権時代に国会に提出された国家秘密法(スパイ防止法)の最高刑も死刑だった。そのため今般の特定秘密保護法も一度認可するとさらなる重刑化が時と共に進捗するのではないかと著者は危惧するのである。
 さらには武器輸出三原則が2011年の野田政権時代に米国への武器技術供与などが例外扱いされるという見直しが図られた。「神戸新聞」の2013年2月18日社説「武器輸出三原則/緩和で失うものは大きい」によれば、米国などが共同開発中の最新鋭ステルス戦闘機F35製造に日本企業が加わっても、第三国への輸出は米国と連携して厳格に管理するので例外扱いするという。
 第二次安倍政権が目指す国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案と一体となって施行準備に入った秘密保全法の真の目的は、「米国との軍事機密や武器開発に関する情報の共有化を前提としており、日本を米国の戦争準備に組み込んでいく」と著者はみる。
 その兆候は前政権時代から徐々に露となってきた。2012年6月20日には「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」設置法から「平和目的に限る」との規定が削除されている。著者は「核弾道を積んだミサイルと人工衛星は技術的には同じものである」と指摘する。現に「WIRED FOR WAR:ロボット兵士の戦争」著者のピーター・W・シンガー氏が明らかにしたように、2009年の時点で米国は既に人工衛星を使って遠隔操作する無人の爆撃機の開発や施行段階に着手していた。同日、原子力基本法に「安全保障に資する」ことを法案に付帯する改正法が成立。著者は平和目的以外に「潜在的な核抑止力を保持するためとしか理解できない」と強く危惧してきた。
 「ウォール・ストリート・ジャーナル」が2013年4月7日の「来る核戦争勃発」で、当時北朝鮮が繰り返していた核ミサイル攻撃宣戦布告の威嚇を受けて、「日本は既に核燃サイクル施設を所持しており、核兵器に転用できるだけのプルトニウムをまもなく生産することになるだろう」と書きたてたことによって、
権威ある右派媒体であるが故に「日本が核保有国となる」という喧伝を図らずも世界が無視することができなくなるという状況が一時的にでも暗転した。 
 本書では自民党日本国憲法改正案の本質にも迫り、国防軍と集団的自衛権公認によって戦争ができる国家へと作り替えられると熱を込めて綴られているが、現に2013年12月23日には南スーダンPKOに参加している陸上自衛隊の銃弾1万発を国連経由で韓国軍に提供する方針を固め、武器輸出三原則の例外扱いとした他、2014年1月8日には自民党運動方針の最終案の原案から、安倍首相が行った靖国参拝について「不戦の誓いと平和国家の理念を貫くことを決意し」との表現が削除された。
 近年の一連の日本政府の動向からは、軍靴の音が間近に迫った軍事国家へと転落していく序章に思えることに著者は魂を込めて訴追の声を上げ続けているのである。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く