他人と違うこと、それは悪なのか?

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破戒 (新潮文庫)

戒めを守り、自分を偽って暮らす主人公。

主人公は瀬川丑松という青年で、先祖は被差別身分の人でした。
明治時代、士農工商という身分がなくなった、というのはご存じの方も多いでしょうが、それと同時に、その士農工商の外にいた被差別身分の人たちも普通の人になりました。
制度的な差別がなくなった、とはいえ、人々の中の偏見は残っています。
もともと被差別身分の出身者だとわかれば、社会から追放されてしまうような時期です。
その被差別身分の出身であることを誰かにも明かしてはいけない、それがこの主人公が父から何度も言われている戒めです。

その一方で、彼が先輩と慕う人は被差別身分であることを明かして社会から追放されてもしぶとく活動をしている人でした。
彼はその先輩にひどく惹かれていきます。
けれど、彼は惹かれている相手にすら自分のことを隠しています。
隠しているから、まだどこか先輩と自分が隔てられているように感じてしまいます。
彼は先輩にだけは自分の秘密を打ち明けようと決心します。

同じ頃、地域である噂が広まります。
彼が働いている学校でその被差別身分出身の先生がいること。
そんな人には教えてほしくない、と人々はささやきます。
もちろん、それは彼のことです。
彼は身分を隠しているので、あたかも普通の人として扱われています。
生徒から尊敬もされています、友だちもいます。
けれど、彼らは何も知りません。
知らないから、彼とその被差別身分の出身者のことを話して悪く言います。
彼の他にも被差別身分出身の登場人物が何人か出て来ます。
その人たちと、何も知らない人たちの言葉からその被差別身分の人たちがどんなに息苦しい生活をしていたかが想像できます。

話を聞きながら、丑松は『人間は平等である』と思います。
思いながらも、そうやって反論することができません。
そういう心の叫びを抱えた人は今もまだ世界にたくさん存在していると思います。
被差別身分の出身でなくても、ちょっとした他者との違いでつまはじきにされてしまう場合もあります。
他人と違うこと、個性的であること、それはそんなにもいけないことなのかな、と思います。
これだけ人間がいるんだから、みんな違うのなんて当たり前。
マイノリティが差別されない世の中になることを祈ります。

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