快晴フライング(古内一絵)の書評・感想

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([ふ]2-1)快晴フライング (ポプラ文庫 日本文学)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-1996.html

いやー、これはメチャクチャ面白かった!部員集めから話が始まるんで、全体の三分の二ぐらいまで全然水泳をしないんだけど、その過程が凄くいい。たぶん水泳をやってる人からすれば、初めあんなダメダメだった連中が、短期間でこんな強くなるわけないだろ!みたいなツッコミが入ったりするのかもだけど、僕はあんまりそういう部分は気にならないし、ストーリーもキャラクターも凄くいいんで、最後まで楽しんで読めました。中盤以降はほぼずっと、ウルウルしながら読んでましたよ。読んでいる途中で、加納朋子の「少年少女飛行倶楽部」を連想しました。
ネタバレになってしまうから書けないある人物の話が、やっぱり一番好きだなと思う。たぶんそいつの話がなければ、本書の魅力の半分は失われていたんじゃないかな、と思います。

『水中にいる時だけ、重力を忘れられる。
生きづらさという名の、重力を。』

読んでる時に思いついたフレーズなんだけど、そんな感じなんです。そいつは本当に、ただ生きていくということが茨の道というか苦しみの連続みたいな奴で、ホントに大変だと思う。しかもそいつは、無駄に○○だったりするわけで、普通だったら嬉しいはずのその事実が、そいつにとっては余計な足かせになっている。
僕は、そいつとは全然違う形だけど、やっぱりある種の生きづらさみたいなのをずっと抱えていて、しかもそれを、自分でもなかなかうまく言葉に出来ないし、だから周囲の人間にきちんと理由を分かってもらうことは難しいだろうしで、全然同じ境遇ではないんだけど、凄く分かる感じがした。自分が変わることが出来ないという事実を曲げないために、ありとあらゆる妥協をし、ありとあらゆる不都合に目をつぶるしかない生き方というのは、僕もまあ似たようなところがあって、そいつの生き方にはなんか凄く共感できてしまった。
そいつが、水泳部と関わることで得たものの大きさは、ちょっと計り知れない。そいつが、もう得ることが出来ないだろうと思ってた様々なものがどんどんと近づいてくる状況は、嬉しくもあるだろうし、ちょっと怖くもあるだろうと思う。そういうバランスが凄くよく描けていたと思うし、たぶんそいつと話す機会があったら、全然境遇は違うのに、ものすっごく話が合うんじゃないか、とか思ってしまいました。
あー、しかし、ここで書いている『そいつ』の話に真っ向から言及できないのは歯がゆいなぁ。もっと色々書きたいことはある気がするんだけど、さすがにそれをネタバレしちゃうのはマズすぎるだろうし。
そいつに関する部分で言うともう一つ、僕が勝手に受け取ったメッセージがある。それが、

『今を生きろ』

というものだ。
僕は学生時代、『未来の自分の生活を守るために、今を生きている』ような人間だった。そして今、本当にそういう人は多いと思う。本書でも、春日というのがそういう人間の代表として描かれている。
そういう生き方を、別に否定するつもりはまったくない。春日も言っていたけど、この格差社会を生き抜くには、もうこうするしかないんだ、というのは、その通りだと思う。若いうちにどれだけ頑張れるかで、将来は自ずと決まっていく。別にそれは格差社会じゃなくたってそうだろうけど、今の日本は余計にそういう傾向が強くあるんだと思う。

感想

そんなわけで、僕にとってはかなりジャストフィットする素晴らしい作品でした!全然水泳をしない水泳小説ですが(笑)、最後の弓が丘杯の描写は本当に感動させられるし、部員集めに関わるストーリーは本当に素敵です!加納朋子の「少年少女飛行倶楽部」とか、三浦しをんの「風が強く吹いている」なんかが好きな人なら結構ハマるんじゃないかなと思います。是非読んでみてください!

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