放課後はミステリーとともに(東川篤哉)の書評・感想

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放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2003.html

本書は、「謎解きはディナーのあとで」で本屋大賞を受賞した著者の最新作です。日常系のミステリの連作短編集です。まず大枠の設定だけ書いておきましょう。
霧ヶ峰涼は私立鯉ヶ窪学園高等部に通う高校生であり、探偵部の副部長だ。探偵部というのは、探偵小説研究部みたいなものではなく、学園内で起こる事件を実際に追いかける、そんな部活である。
霧ヶ峰涼はなんだかんだ様々な事件に関わることになるのだが…、実際に霧ヶ峰涼が事件を解くことはごく稀だ。たいてい、その場にいる霧ヶ峰涼以外の誰かが事件を解決する。そんな狂言回しのような役回りの、探偵部副部長。
なかなかよく出来たミステリだと思いました。現象自体は、ちょっとさすがにそれは起こらないだろ、というような無茶な話もあったりしますけど、謎の設定とか謎解きの過程なんかはなかなか巧く出来ているなぁ、という感じがしました。
特によく出来てる話だなぁ、と思ったのが、

E形の建物から泥棒が消える「霧ヶ峰涼の屈辱」
芸能人が密会場所から消える「霧ヶ峰涼の逆襲」
不良が吸ってたタバコが見つからない「霧ヶ峰涼の放課後」

の三つかな。
「屈辱」は、「実は謎なんてなかった」というような現象が、なかなかうまく説明されると思いました。その過程でもう一つのネタが明かされるという趣向で、冒頭の話としてかなりいい役割をしたなという感じ。一番バッターって感じですね。
「逆襲」は、本書の中では四番バッター級のネタじゃないかと思いました。トリック自体もなかなか鮮やかだし、そのネタを最終的にどう読者に提示するかという料理の仕方も巧い。トリックを暴くことでさらなる真相が見えてくる、という展開がいいですね。
そういう意味では「放課後」も巧い趣向を取っていると思いました。野球には詳しくないんで間違ってるかもだけど、3番か5番バッターぐらいかな。トリックを暴くことでさらなる真相が見えてくるという点は先ほどと同じく見事だし、まずそもそも一体何が何が問題なのか、という部分で読者を振り回すところも巧いと思いました。
逆に、さすがにこれは厳しいんじゃなかろうか、と思ったのは、空から人が降ってくる「霧ヶ峰涼の屋上密室」。これはちょっと、色々と無理がありすぎるような気がして、辛いかなぁと思いました。

感想

とにかく読みやすく、手軽によめる作品だと思います。ミステリーを読み慣れていない人でも、ミステリーの入門として結構読めるんじゃないかと思います。「謎解きはディナーのあとで」よりミステリ度は高い、という前評判を聞いてたんですけど、確かにそうで、コアなミステリファンが本書をどう読むかは分からないけど、僕みたいな、本格ミステリの古典はあんま読んでないけど、ミステリってジャンルは好きよ、みたいな人間なら割と楽しめるんじゃないかなと思います。読んでみてください

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