宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎(村山斉)の書評・感想

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宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2008.html

本書は、文部科学省が世界トップレベルの研究拠点として発足させた、東京大学数物連携宇宙機構(IPMU)の初代機構長に就任した著者による、素粒子物理学から見た宇宙論、という感じの作品です。著者は、物理の楽しさを教えるために市民講座などで積極的に講演活動を行っているようで、物理学者の書いた本にしては相当易しく描かれている作品です。
本書は、かなり初心者向けとして書かれている、入門的な作品です。これまで色んな物理の本を読んできた僕には、これまで読んだことがあること基本的なことがメインで描かれているなぁという感じでした(とはいえ、『読んだことがある』のと『理解していること』は違うのでご注意を)。
本書で迫ろうとしている命題は大きく二つ。一つは、「宇宙はどんな物質で出来ているのか」、そしてもう一つは、「それらにどんな力が働いているのか」です。
さて、宇宙の話なのに、何故素粒子の話が出てくるのか、という部分から話は始まります。主にそれは、ビッグバンが関係しています。COBEという衛星によって観測された、マイクロ波宇宙背景放射の異方性によって、宇宙がビッグバンから始まったことはほぼ証明されました。そしてビッグバンが起こった頃というのは、宇宙は極小のサイズ、つまり素粒子のレベルだったわけです。著者も元々は素粒子物理学で学位を取ったようですが、今は宇宙論の研究をしています。
また本書では、相対性理論や量子論なんかについても、本書の流れに必要な部分だけを抜き出して、その概略を随時説明しています。本書の主眼は相対性理論や量子論にはないので、あくまでも補足的な部分の説明になりますが、それらについてごく入り口を大雑把にイメージしたい、ということであれば、なかなか分かりやすい説明になっていると思います。
そして話は第一の命題、「宇宙はどんな物質で出来ているのか」という話になります。ここで説明されるのが、20世紀物理学の金字塔と言ってもいい、「標準模型」と呼ばれる理論です。
これは、物質の最小単位が原子ではなく実はクォークと呼ばれるものであり、それらクォークの様々な性質を分類、あるいは組み合わせることによって、様々な事柄に説明がつく、というものなんだけど、僕はこの標準模型がどの本で読んでも受け付けないんですね。それは、著者の力量とかの問題ではなく、標準模型という理論に、固有名詞が山ほど出てくるからです。
トップクォークだのダウンクォークだのニュートリノだのといった名前に加え、スピンやら色やらと言った性質までわらわら出てきて、これは本当に難しいと思うのです。
それは、第二の命題である「物質にどんな力が働いているのか」という部分でも同じです。ここでは四つの力(重力・電磁気力・強い力・弱い力)について説明されるんだけど、その説明の基本となっているのが標準模型なんですね。それぞれの力は、物質間でそれぞれの力に対応した粒子がキャッチボールされることで説明されるんですけど、やっぱり相変わらず固有名詞が山ほど出てくるんで、かなり気合を入れて読まないと分からないんですよね。
そしてその後で、ノーベル賞を受賞した小林・益川理論と南部理論について話が進んでいきます。本書の僕の収穫としては、小林・益川理論がどういう部分で重要な貢献をしたのかがなんとなく分かった、ということですね。

感想

これまで結構物理系の本を読んでいる僕には、さほど目新しいところのない作品ではありましたが、物理学の初心者でもなんとかついていけるように書かれている入門に近い作品だと思いました。理論の込み入ったところには敢えて触れず、難しい理論は全体の流れに必要な部分だけ抜き出し、なるべく難しい表現を使わないで書かれていると思います。とはいえそれでも、標準模型理論は固有名詞が頻発するんで、ここの部分の難解さは、著者の力量ではなく、理論の難しさ(というか煩雑さかな)だと思ってもらえればいいかなと思います。中盤以降、ちょとと難しいなと感じる部分が増えてくるかもですけど、真ん中ぐらいまでは結構読めると思うので、物理はちょっと…、という方も是非読んでみて欲しいなと思います。

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