連続殺人鬼カエル男(中山七里)の書評・感想

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連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2009.html

本書は、このミス大賞の最終選考に、このミス大賞を受賞した「さよなら、ドビュッシー」と一緒に残った作品です。新人賞の選考会の最終選考に、同じ著者の作品が二作残るというのは異例中の異例でしょう。
飯能市に、カエル男と名付けられたとんでもなく凶悪な殺人犯が現れた。
第一の犠牲者である女性は、マンションの13階から全裸で吊り下げられていた。そして傍には、子供が書いたような稚拙な犯行声明文。その犯行声明文の内容から、カエル男と名付けられたのだった。
カエル男の犯行は続くが、警察の捜査は進展しない。被害者同士には、飯能市に住んでいる、以外の共通項を見つけることが出来ず、現場に犯人の痕跡らしきものも残されていない。
被害者同士の繋がりが見えない殺人事件は、飯能市民に多大なる影響を与えた。いつ自分が標的になるかもわからないという恐怖が、市民を混乱の渦へと巻き込んでいく。その犯行形態から、精神障害者の犯行ではないかと疑われ、市民による精神障害者への弾圧が日増しに激しくなっていくが…。
というような話です。
これは凄いなぁ。面白かった。解説でも書かれていたけど、物語の序盤から中盤に掛けては、よくありがちなサイコスリラーの体裁を取っているんです。だから初めの内は、まあ確かに面白いけど、よくあるタイプの作品だなぁと思いながら読んでました。異常な殺人形態、心神喪失者の責任能力を問う刑法第三十九条、カエル男というマスコミが好きそうな名称、遅々として進まない捜査など、まあよくある感じだよね、とか思いながら読んでました。
でも、中盤から徐々に、なんかこれは違うぞ、という感じになってきました。
普通のサイコスリラーと一番違うかなというところは(まあ別にサイコスリラー的な小説を結構読んでるわけでもないんですけど)、市民の感情の変化でしょうか。本書では、殺人と捜査が描かれるのと並行で、殺人の舞台となっている飯能市の市民たちの反応というのが逐一描かれていく。その変化が、物語の中で非常に重要な役割を担うことになるんですね。
ここの部分は、物語の中でも結構重要だと思うから詳しくは書かないけど、非常に面白いと思いました。小説中で殺人事件が起こった際、新聞記者がどんな反応をするか、あるいはネット上でどんな反応があるか、みたいなことを描写することはわりかしあると思いますけど、そうではない一般市民の反応をここまで追った作品ってなかなかないような気がするんです。僕は、斬新だなと感じました。もちろん、一般市民の反応で、これはどうかなぁ、と感じる部分もありましたけど、でもそういう描写が物語の展開上必要だというのは凄くよく分かりました。
実際に、ここまで市民が恐慌を来たすことがあるのかどうか、それはあくまでも想像することしか出来ないけど、でも、地震以降の、テレビやネットで僕が知りうる限りの人々の混乱を目にすると、こういう風な流れになることも考えられるよな、という風に思いました。
そして、ストーリー自体もお見事という感じです。正直読んでて、これどんな風に終わらせるんだろう、って思ってたんですけど、ラスト付近でのあれやこれやは見事だと思いました。

感想

というわけで、ちょっと新人の作品とは思えない、かなり上質な作品だと思います。もちろん、突っ込みたくなるような部分も若干はあるでしょうけど、それを補って余りあるほど魅力の詰まった作品だと思います。読み始めは、よくあるサイコスリラーだと思うでしょうが、読み進めていく内に段々と違いが分かってきて、引きこまれていくと思います。是非読んでみてください。

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