六月の輝き(乾ルカ)の書評・感想

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六月の輝き

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2011.html

本書は、7編の短編が収録された連作短編集です。それぞれの短編の内容を紹介しようかと思いましたが、後の方の展開を明かす形になるのは良くないと思ったんで、長編小説のような紹介をします。
幼なじみの美耶と美奈子は、本当にお互いが唯一の親友という感じの関係で、家も隣同士生まれた日も同じという仲だった。
しかしそんな関係は、ある事件を境に一変していく。
美耶の左手には驚異的な力がある。そんな噂が一瞬にして田舎町に駆け巡る。確かに美耶は、他の誰にもない特別な力を持っていた。
しかし、その力を持っていたがために、美奈子は美耶と決別することになってしまったのだ。
親しく会話をすることもなくなり、しかし時々その能力を使わせようと美耶に命令する美奈子。クラスの優等生・渡辺史恵や、非行少女になった美奈子を助けた高田洋行など、美耶の能力を垣間見た人たちの視点から、美耶の儚い能力を、そして美耶と美奈子の関係を描いた作品です。
まあまあ面白かった、という感じでしょうか。僕は個人的に、乾ルカという作家に非常に大きな期待をしていて、その期待が大きかった分、まあまあという感じに落ち着いたような気もします。
僕は乾ルカの作品は、「メグル」「夏光」についで三作目だったんですが、個人的には「メグル」「夏光」の方がよかったなぁ、と思いました。
一風変わった能力や状況が描かれる、というのは、乾ルカ作品に通底しているものだと思います。本書でも、美耶という少女の持つ特殊な能力が物語の軸になっています。その能力を通じて色んな人と関わりあうのだけども、個人的には、美耶の感情がもっと作品の中で描かれているとよかったような気がします。
美耶自身が望んだわけではない特殊な能力を獲得してしまった美耶という少女は、幼いながら人間の嫌な部分をこれでもかと見せつけられることになります。その辺りの心の内が、もう少しくっきりと描かれているとよかった気がするんです。
美耶の内面は基本的に、美奈子の視点から描かれることになります。ただ美奈子という女の子は、物語の結構冒頭の時点で美耶と決別してしまうんですね。もちろん、本人が心の底からそうしたいと望んだわけではないのだけど、でもそういう態度を取る以外自分の気持ちを落ち着かせることが出来なかったわけです。
そんな美奈子視点からの美耶の描写だと、ちょっと足りないような気がしてしまったんです。本書は美耶と美奈子という両輪が描かれていてこそ、ではないかと思うんですけど、美奈子の方はそれなりにきちんと描かれている感じがしたんですが、どうも美耶の方の内面が作品の奥に隠されてしまっているように感じられて、ちょっともったいない気がしました。

感想

話としては、なかなかいいなと思うものがあるんです。クラスの優等生で犬好きの渡辺史恵の飼い犬に関わる話、高田に保護された美奈子が美耶を呼びつけてまで関わらせた話、美耶の母親の望みを叶えた話、どれも、それぞれの場面での美耶の心の動きがもっと読んでいる人間にはっきりと伝わるような構成に出来れば、もっともっとよかったんじゃないかなぁ、と偉そうなことを言ってみるわけです。
乾ルカは僕の中でかなり期待の作家なので、もっと素晴らしい作品を書けるんじゃないかなぁ、と期待が高くなってしまうんだろうなぁ、と思います。個人的には「メグル」とか「夏光」の方がいいなぁ、と思います。

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