キネマの神様(原田マハ)の書評・感想

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キネマの神様 (文春文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2014.html

いやー、泣きました!ボロボロ、って感じじゃないけど、ジワジワ泣いてましたよ!小説読んでこんなに泣いたのは久しぶりかもしれないなぁ。
タイトルからは、まあ映画の話なんだろうな、っていうイメージだと思います。まあ確かに映画の話だし、映画にほとんど興味のない僕には、よくわからない話(具体的な映画名とその内容や感想についての文章が出てくるんで、その映画を知らない人にはよく分からない部分も多いです)も結構出てくるんですけど、まあそんなことはどうでもいいやって思えるくらい良い話だなと思います。正直、映画小説(なんてジャンルがあるんだかわかりませんが)としてどうなのか僕には判断できませんし、そういう方面からこの作品を評価することはまるで出来ませんけど、家族小説として、そして家族だけではない、友情小説、とでもいうのかな(ちょっとニュアンスをうまく伝えられないんだけど)、そういう作品としては本当に素晴らしいと思います。
本書では、本当に、歩の父親(後々ゴウちゃんと呼ばれることになるのだけど)が本当に良い味を出していると思います。とにかく真っ直ぐな人なんですね。自分の欲望にも真っ直ぐだし、人の気持ちにも真っ直ぐ。それでいて四角四面なんてことはまったくなくて、だらしないし適当だったりもする。母や歩に散々迷惑を掛け通しで、それでも80年間まるで変わらないまま生きてきた父が、サイトで映画評論を書くことでどうなっていくのか、という部分は本当に面白いです。とにかく厄介者でしかなかった父が、凄い波を呼び起こすことになる。父を中心として、とんでもない渦が巻き起こることになる。その中で父は、色んな面を見せていくことになる。それは、長い付き合いである母や歩にさえ見せたことのなかった面だ。だからこそ母も歩も、その父の変化に驚き感動し、そしてそれが読み手にも伝わってくる。
本書の良さは、歩の父に限らず、本書に出てくる誰もが『強い想い』を抱いているから、そしてそれが伝わってくるからだ、という感じがする。まずは、映画への想い。映画という娯楽はどういうもので、それに関わる人たちが映画のどう言った部分を残そうとしているのか。その想いが凄く伝わってくる。
僕は書店員で、本に関わる仕事をしています。映画と本はまた違う部分は多々あるのだろうけど、本書を読んで、残したいと思う部分は近いんじゃないかな、と思いました。
映画の良さにしても本の良さにしても、これは青臭い意見だろうけど、『商売』と密接に結びついてしまうことで、どんどん薄れていってしまうと思うんです。もちろん、商売にしなければ伝わるものも伝わらないわけで、要はバランスの問題ですけども、商売でありすぎると、それぞれの中の良さみたいなものがどんどん損なわれていってしまうのだろう、と。
映画も音楽も本もそうだと思いますけど、大量生産大量消費という世の中で、その世の中に合わせた舵取りが必要とされてきたのだと思います。その過程で、良くなった部分、悪くなった部分と色々とあるんだと思いますけど、そういう世の中では損なわれてしまいがちなものをなんとか守りたいと、本書の登場人物たちは色々と奮闘することになります。変わった人ばかりだけど、映画への想いは皆同じで、それが人を繋いで行く。そこが凄くいいなと思いました。

感想

あと本書を読んで僕が強く感じたことは、何かを深く深く好きになるって羨ましいなぁ、ということです。本書では映画好きのことが描かれますが、別になんだっていいんです。アニメのオタクとかでも、割と僕は羨ましかったりする。僕は、本は山ほど読んでるけど、正直、本好きだと言えるほど本が好きなわけでもない。他に強く関心のあることがあるわけでもないし、本にしたってそこまで深入りは出来ない。何かを心の底から深く好きになるって、ある種才能だよなぁ、と思っているのでした。
正直、あんまり期待してなかったんですけど、メチャクチャ良い作品でした!映画に興味があるとかないとか関係なしに(僕は基本ありません)楽しめる作品だと思います。是非是非読んでみてください!

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