想い出あずかります(吉野万理子)の書評・感想

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想い出あずかります (新潮文庫)

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鯨崎町の岬の崖下に、子供たちが頻繁に足を運ぶ場所がある。大人は近づかない。というか、大人には、その存在を知ることは出来ない場所。
想い出質屋。
そこには魔法使いが一人住んでいて、来た子供たちの想い出に値段をつけて預かる。20歳までにお金を持ってくればその想い出は取り戻せるけど、そうしなければその想い出は永遠に記憶から失われたままになってしまう。そして、20歳を過ぎれば、そもそもその想い出質屋のことをすべて忘れてしまう。そういうルールだ。
小学生の遥斗は、想い出質屋のことをきちんと理解しているのかいないのか、お母さんとの良い想い出も悪い想い出も、とにかくなんでも質に入れている。想い出なんかなくたって、まあ大丈夫だろう、と思っている。
中学生の里華は、新聞部部長として想い出質屋にやってきた。想い出を預けたことは、一度もない。みんなから色んな質問を集めてぶつけるという企画を考えたのだ。そこで、魔法使いと仲良くなり、想い出を預けることはないまま。想い出質屋に入り浸るようになる。
高校生になった里華はとあるきっかけから、芽依という女の子と仲良くなる。芽依も、想い出質屋に通っている一人だった。里華は、想い出質屋に想い出を預けないままで、想い出を預ける人、魔法使いに頼みごとをした人たちと関わっていくが…。
というような話です。
ほどほどによかった、という感じです。何でも出来る魔法使いが、どうして想い出質屋なんていう回りくどいことをしてるのか、っていう部分は若干疑問だったけど、でもなんとかそれは作中で説明を施そうとしてるんでいいかな。設定は、なかなか面白いと思います。
想い出を決して預けることがない里華の存在がなかなかいいですね。里華は、明確に言葉にすることは出来ないまでも、想い出を預けてしまうことに反対の立場。軽々しく想い出を預ける人、切実に想い出を預ける人、魔法使いにイレギュラーな頼みをする人。そういう人たちを間近で見てきた里華は、何が正解なのか悩みつつも、やっぱり想い出を預けることには否定的だ。その揺れが、なかなか面白い。
想い出を預ける面々もなかなかいい。遥斗は、初めこそただ無邪気に想い出を預けてお金をもらって喜んでるだけの子供だったけど、後半なるほどそうなりますか、という展開になる。まあちょっとあざといかなぁ、って感じもするんだけど。
芽依はなかなか切実で、個人的には想い出質屋のある意味正しい使い方なのかも、という気はする。確かに、もし想い出質屋が存在したら、こんな風な使い方をしてしまうかもしれないな、と思った。しかしホント、これはいつも書くことだけど、女子の人間関係って、ホント大変ですわね。
本書の中で、一番僕の心をざわつかせるキャラクターは、雪成だな。雪成は、ドライ過ぎるだろ、っていうぐらいの考え方の持ち主なんだけど、割と僕もそういう感じがあるんだよなぁ。雪成の言ってることはなかなかむちゃくちゃで酷いんだけど、納得してしまう部分もあって恐ろしや。それを口に出して言えちゃう雪成は凄いぜ。
しかし、本書の帯に、モデルの杏のコメントが載ってるんだけど、この人は、どの本のコメントを見てもなかなか絶妙だよなぁ、と思う。文章にキレがある、という感じ。「哄う合戦屋」のコメントも、巧いなぁって思ったし、他の作品についてたコメントでもそう思ったのはあったはず。こういうコメントを書きたいものだなと思います。

感想

ほどほどに良い作品だったと思います。僕だったら、想い出預かって欲しいかも、とか思ったり(何故なら、自分の記憶力が貧弱すぎるから、どこかに保管されてる方が安心)。

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