幸福な生活(百田尚樹)の書評・感想

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幸福な生活 (祥伝社文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2023.html

本書は、18編の短編が収録された短篇集です。すべて、『最後の一行』にこだわった作品で、最後の一行で物語をひっくり返すというような形の作品になっています。本の構成も凝っていて、最後の一行はすべて、ページをめくった一行目に配置されているので、最後の一行が読んでいる途中で視界に入っちゃうことはありません。
なかなか面白い作品だったと思います。馬鹿馬鹿しい作品もありましたけど(「償い」っていう話の馬鹿馬鹿しさは結構好きだったりします)、基本的にどの話も、人間の卑しさとか醜さみたいなものを、最後の一行で巧いこと炙り出しているような作品でした。
一番好きなのは、「豹変」かな。ラスト近くになると、なるほどこういう風に終わるんだろうな、というのはなんとなく見えちゃうは見えちゃうんだけど、これはなかなか見事なラストではないかと思います。お互いの『報告』のタイミングが絶妙だったばっかりに、というような話で、この話の後が知りたいですね。どうなったんだろうなぁ。
この話に限らず、ラスト近くになると、『きっとこんな風に終わるんだろうなぁ』というのがなんとなくみえてしまう作品というのは割とありました。それは、作品自体の問題というのではたぶんなくて、『最後の一行の衝撃』という部分が全面に押されている小説であること、かつ、そういう小説がたくさんまとまってしまっている小説であることが原因だろうと思います。
最後の一行で衝撃を与えるなら、この展開ならきっとこんな風に終わるんだろうなぁ、という風な予想が出来てしまうのは、作品の構成上どうにもしようがないポイントですけど、やっぱりちょっともったいないですよね。例えば、本書は某所で連載されていた小説ですが、一編一編独立して読めば、最後の一行の衝撃ということを意識しないで読めるはずなので、先の展開を予測できないまま読めるのではないかと思うんです。ただ、そういう作品が一冊の本にまとまってしまうと、どうしても『最後の一行』という部分が強調されてしまうんで、展開がなんとなく読めてしまうことになっちゃうんですね。そこがやっぱりもったいない感じはしました。
あと、「再会」はなかなか素敵だと思いました。これは展開が予想できない方の作品だったなぁ。この展開で、何をどうしたら最後の一行の衝撃を与えられるのか、全然予想できませんでした。それでいて、ちょっと無理あるんじゃないか、というようなオチにもならず、最後はなるほどー、と思いました。
上で挙げたもの以外だと、「そっくりさん」「ビデオレター」「淑女協定」なんかが好きです。

感想

作品の性格上、どうしても内容に突っ込んであれこれ書けないので、どうしても感想が短くなってしまいますが、なかなか挑戦的な面白い趣向の作品だと思います。読んでみてください。

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