ジェノサイド(高野和明)の書評・感想

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ジェノサイド 上 (角川文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2025.html

本書は、今現在文芸書で相当注目を浴びている作品で、徐々にジワジワとその評判が広がりつつある作品です。『本年度ナンバーワン』の呼び声も高い、大注目作です。
この作品は本当に凄い!ここまで圧倒的な物語はなかなか紡げないのではないかと思う!超ド級のエンターテイメントという作品で、とにかく『圧倒的な物語だ』というしかない。
先に書いておくと、本書は本当に、内容のどの部分に触れてOKなのかの判断が非常に難しいくらい、内容について書くにはネタバレに注意しないといけない作品で、だからここでの感想も、全体的にモゴモゴした感じになっちゃうかもだけど、それは許してください。ちょっと書けないことが多すぎるのです。なるべくネタバレぎりぎりのラインぐらいを狙いたいところなのだけど。
本書は、想像力の物語だ、と書くと、多少誤解されるかもしれない。想像力、と言っても、ファンタジーやSFのような想像力ではない。ファンタジーやSFのような想像力を、『実際には起こりえない、あるいはほとんど起こり得るはずのない領域まで含めた想像力』だと表現するとすれば、本書の想像力は、『現実という枠組みの中で最大限に翼を広げた想像力』と表現できるのではないかと思います。
本書で描かれていることは、『実際には起こっていない』。カッコ付きにしたのは、もし本書で描かれていることが実際に起ったとすれば、確実に情報が制限されるだろうから、僕達のところにそういう情報が届いていないこと=それが起こっていないことだ、ということにはならないのだけど、まあそれでも、たぶん実際には起こっていないだろうなぁ、と思われることが描かれます。
しかし一方で本書で描かれていることは、『もしかしたら僕達が経験したかもしれないもう一つの現実』と表現してしまってもいいだろうと思うのです。本書の核の部分だけ抜き出して判断すれば、いやいやそんなこと起こりえないでしょ、としか思えないのだけど、膨大な取材や広範な知識、さらには緻密な論理によって組み立てられた物語は、まさに『もう一つの現実』の顔をしています。高野和明は、現実の枠組みの中で、限界ギリギリまで想像力の翼を広げている。その、可能なかぎり最大限に飛躍した物語に、『現実の顔』を与えることが出来ているその手腕がとんでもなくて、それだけで奇跡的な作品ではないか、という感じがします。世の中に、『ありえない領域まで含めた想像力』を駆使して描かれたファンタジーやSFと言った作品は数多くあるだろうけど、『現実の枠組みの中で最大限に翼を広げた想像力』を駆使して描かれた作品というのはなかなかお目にかかれないのではないかと思います。少なくとも僕には、そういうタイプの作品をパッと思い浮かべることは難しいし(梅原克文とかそんなタイプの作家だったなぁ、と思いつつ)、そういうタイプの作品はもちろんそれなりには存在するだろうけど、その中でもトップクラスに優れた作品であるという確信があります。
とはいえ(だからこそ、と言うべきか)、本書では難しい理系的知識についての記述が結構出てきます。そういうことを書くと敬遠したくなる人は出てくるだろうけど、あらかじめそれを知らないで読むと、途中で諦めてしまう人も出てきそうなので書きます。研人が薬を作り出す過程で出てくる知識はなかなかハードなものがあるし、研人が周囲の人達と交わす理系的な会話も、非理系の人たちには馴染めないものが多いかもしれません。

感想

というわけで、ホント超絶的な物語だと思います。凄過ぎる!5点満点で10点上げたい作品です。ノンストップのエンターテイメントだけど、ただ面白い・楽しいっていうだけの作品ではなくて、様々なことを考えさせられる作品だと思います。特に、普段生きていたらまず考えないだろうことにまで想いを馳せることが出来ると思います。若干難しい部分も出てきますが、僕のアドバイスを参考に是非チャレンジしてほしい作品です。是非是非読んでみてください!

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