使ってみたい落語のことば(長井好弘)の書評・感想

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使ってみたい落語のことば (中公文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2039.html

本書は、内容の紹介は非常にあっさりしたものになりますが、落語に使われている言葉の中から、著者がこれはいいと思うものを抜き出し、それについて解説を加えている、という作品です。落語に詳しくない僕には分からないのですが、恐らく落語ファンには定番的な作品なんだろうなぁ、という感じの言葉が多数収録されているんだろうと思う
基本的に、落語から抜き出した言葉で1ページ、そしてその言語についての解説が2ページという構成の作品です。解説では、その言葉がどんな状況で使われているのかという説明や、現代の世の中でその言語を使うとしたらどんな風に使ってみたらいいか、というようなことが書かれています。
僕の感想としては、音が聞こえないのが最大のネックだな、という感じです。これは別に、CDをつけろ、とかそういう話ではありません
僕はこういう落語の言葉って、文字だけではニュアンスはすべて伝わらないんだと思うんですね。以前とある方と『小説の中に出てくる方言』の話をした際に、方言というのは発音まで表現の中に含まれているから、文字として読む場合どうしても違和感がある、という話を聞いて、なるほどそれは面白い意見だなと思ったことがあります。この落語で使われる言葉の場合でも、僕は非常に似たようなことを感じました
先程も書いたように、音が聞こえる、というのは、CDをつけろ、とかそういうことではありません。例えば日常的に落語に触れている人であれば、本書を読んでも自分の脳内でその言葉がイントネーションまで含めて再現されることでしょう。あるいは落語に触れてなくても、テレビの時代劇とか時代小説なんかに触れる機会の多い人には、自身では直接耳にしたことのない落語の言葉であっても、テレビや小説からの類推で自分の頭の中で言葉を再生することが出来るかもしれません。そういう人が読む場合、落語で使われる言葉のニュアンスまですべて含めて捉えることが出来るので面白く読めるかもしれません。
ただ僕の場合、そういうベースとなるものが何もないんですね。落語も人生で一回しか聞いたことがないし、時代劇や時代小説には触れる機会はない。そういう僕が本書を読んでも、言葉がただ文字としてしか脳内に入っていかないので、どうしてもその言語の良さみたいなものが伝わりにくいんだろう、と思いました
やっぱり落語って、基本的には耳で聞くものだろうから、字面以上にイントネーションような耳で聞く部分が大事になってくるんだろうと思うんです。そういう意味で、ちょっと僕には馴染めない作品だったかな、という気はしました
さて、本書の内容とはちょっと離れたことを書きますけど、本書を読んでてふと思いついたことがあります。それは、

『楽しむために努力をする、という人々の姿勢ことが、文化や芸術や伝統を生み出してきたのかもしれない』

ということです
例えば今の僕には、落語を十分に楽しむとは出来ないと思うんです。そりゃあ、一回だけですけど落語を聞いた経験で言うと、落語的な知識が何もなくたってそりゃあそれなりには楽しめます。実際に落語を聞かせてもらった時は、凄く面白かったです
ただ、それはやっぱり表面的でもあるのだろうな、と思うのです。落語というのはやっぱり奥が深い。何かの作品のパロディになってる部分もあれば、その話の舞台になっている当時の風俗を知ってこそ笑える部分というのもある。とにかく、知識を蓄えれば蓄えるほどより一層面白さを享受出来るんだろうと思います

感想

今、『楽しむための努力をしなくても楽しめる』娯楽が物凄く増えています。携帯に入ってるゲームなんかはその最たるものでしょうが、そういうお手軽な娯楽に多くの人が流れてしまっているような気がしています。
他の娯楽でも、より多くの人に買ってもらう(消費してもらう)ために、娯楽自体の難易度を下げる、というようなものはいくらでもあると思います。僕は個人的には、そういう流れって怖いな、と思うんです。
もちろん、誰もが色んな分野について『楽しむための努力』をすることは難しいと思います。僕は本を読むだけで精一杯だったりします。ただもし今、『楽しむための努力』を向ける分野が何もない、という人は、是非何かそういうものを一つでも持ってもらえたらいいなぁ、なんて思ったりしました。
本書で抜き出されている落語の言葉を見て音が聞こえてくるような人にはなかなか合う作品なんじゃないかな、と思いました。

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