箱庭図書館(乙一)の書評・感想

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箱庭図書館 (集英社文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2048.html

本書は、6編の短編が収録された短篇集
本書がどんな風に生まれたのかがちょっと変わっているので、まずその話を
本書は、乙一がWEB上で連載していたものなんですが、一般の人からボツ原稿を募集して、それをリメイクする、というかなり変わったやり方で生まれた作品です。乙一は、小説のアイデアがなかなか出てこないらしく、ボツ原稿を集めてもらえれば仕事できます小説書きます、という話を編集者にしたところ、こういう企画が出来上がったんだそうです
どの話も、乙一っぽい作品だなぁ、という感じで、かなり好きな作品です。乙一らしい作品という感じがしました
本書は連作短編というほど作品間の繋がりはないのだけど、どの話もすべて文善寺町を舞台にしていて、かつ、作品のどこかにチラリとでも、必ず潮音という女性が登場する、ということだけは統一されています。送られてきたボツ原稿同士はもちろんなんの関係もない話ばっかりなわけで、それを舞台を統一して、共通する登場人物を登場させる、という趣向だけでも、なかなか巧いことやったなぁ、という感じがします。
僕が一番好きなのは「王国の旗」です。僕の中では、本書の作品でずば抜けて好きな作品です。見知らぬ町に辿りついた早苗が案内された、子供たちだけの王国。そこは、王国の舞台となっている営業していないボーリング場にいる時だけが本来の自分であり、両親と共に家にいる時は偽りの自分なのだ、と思うようにしている子供たちが描かれます。
なんかどうしてもそういうの、凄く理解できてしまうんですね。僕も実家にいた頃は、実家にいることが嫌で嫌で仕方がなくて、両親に対しては本当に偽りの自分を作り出して、それで接していた、という感じです。その王国には、そう望んでいる子供たちが何故か集う、らしいのだけど、きっと僕も近くにそんな王国があれば、行ってしまってただろうなぁ、という感じがしました
お伽話のような設定から始まるけど、話が進んでいくにつれて『キレイゴト』だけでは成り立たない現実が垣間見えてくるようになる、というのも、乙一らしい感じがしてよかったです。物語の終わらせ方も凄く雰囲気があって、その後の広がりを想像してしまう余韻の残るいい終わり方だと思いました。
「小説家のつくり方」は、シリーズで重要な役目を担うことになる潮音について最も描かれている話で、まあ結構好きですね、こういうアホなキャラクターは
「コンビニ日和!」は、コメディタッチで話が進んでいくも、オチもなかなか綺麗に決まっている作品です。コメディタッチなんだけど緊迫感もあったり、それでいて話がどんな風に進んでいくんやら読めない作品で、なるほどなぁ、という作品でした
「青春絶縁体」は、乙一らしさ全開の物語でした。他の誰とも喋れないけど、文芸部の美人な先輩の小山さんとは、漫才のような掛け合いが出来る。でも、教室にいる自分には、そういう部分はまったくない。青春というものと自分は繋がれていない、絶縁体のような存在だ、と嘆く主人公の気持ちは、凄く理解できてしまいます。オチがどうこうというよりは、全体の雰囲気が好きな作品
「ワンダーランド」は、個人的には最も微妙だなあぁ、という感じの作品でした。全体の構成や物語の落とし方など、どうも、乙一はまだまだやれるんじゃないかなぁ、という感じでした。鍵を拾ったから、その鍵に合う鍵穴を探しに出かける、という発想は面白いと思うんだけど、全体的にはちょっとあんまりだったかなぁ、という感じです

感想

全体的に乙一らしい作品が多いなと思いました。乙一のこれまでの著作が好きな人は楽しめるんじゃないかな、と思います。僕は時間がないから出来ないけど、リメイク前の作品も一緒に読んでみる、というのもたぶん面白い楽しみ方なんだろうと思います。是非読んでみてください。

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