御書物同心日記(出久根達郎)の書評・感想

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御書物同心日記 (講談社文庫)

http://blacknightgo.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html

本書は、7編の短編が収録された連作短編集です。
まず全体の設定から。
幼い頃から本の知識に長けていた丈太郎は、それを買われてとある御書物方同心の養子となり、世襲によって御書物方同心を引き継いだ。御書物方同心は、将軍家の御文庫に務める役職であり、本の修繕から虫干しまで、とにかく本を丁寧に保管することを使命とした人たちである。本好きの丈太郎には願ってもない職場である。そんな御書物方同心における日常を描いた時代小説です。
時代小説が基本的に得意ではない(というかほとんど読まない)僕でも、これはなかなか面白く読めました。本のことを扱っている内容だから、という部分もあるんだと思いますけど、文章とか設定とか、そういう部分でも読みやすい作品だったように感じました(他の時代小説とかを読んでないんでちゃんと比較は出来ないですけど)。
三度の飯より本が好き(というような表現は作中にはなかったと思いますけど)な丈太郎のキャラクターが非常によかったですね。とにかく本に触れられていればいい、という丈太郎は、それ以外のことには非常に疎い。葬儀の香料の額を決めることであったり、あるいはそうとはわからないようにお見合いをさせられていたり、というような状況の中で、丈太郎の、本以外には関心が恐ろしく低いんだろうなぁ、という部分が凄く伝わってきます。
御書物方同心では、みんな結構陰気に仕事をしているんです。というのも、火が使えないから(もちろん火事を警戒している)白湯一つ満足に飲めないし、ほんの些細なミスで腹を切らされたり(まあこれは、御書物方同心に限らず他の役職でもそうだったのかもしれないけど)と、地味で緻密な辛い作業ばかりで割に合わない、と感じている人が多いんですね。
そんな中にあって、とにかく本に触れられていれば満足、という丈太郎は、世話役の人間が奇妙に思うくらい、楽しんで仕事をしています。丈太郎にしても天職だったでしょう。しかもみんなが嫌がる本の修繕なんかを好んでやりたがる、というんだから、御書物方同心としてもなかなか重宝する人材だったんじゃないかな、という気がします。
丈太郎の同室の同僚である角一郎もなかなか面白い存在です。一度読んだ本はすぐに暗唱出来る、という特異な才能を持っていて、丈太郎を驚かされます。御書物方同心の仕事はさほど好きになれず、嫌々やっている感じがかなりあるんだけど、なんとなく丈太郎とは相性がいい、という感じがします。
個人的には、丈太郎の妹がいいなぁ、って感じですね。変人好きの僕にはたまりません(笑)。この妹がもっと活躍してくれたりするとより面白かったかもしれないなぁ、と個人的には思ったりしました。
物語全体としては、特別何が起こる、というわけでもありません。もちろん話によっては、ちょっと謎めいたことが起こったりするようなこともあるんだけど、基本的には御書物方同心の日常が描かれている、という感じです。個人的には、御書物方同心って言うから、本が好きな人が集まっているのかな、というイメージがあったんですけど、もちろん仕事としてそこに配属される、というわけだし、みんながみんなそうなわけないよなぁ、と思ってちょっと面白かったです。本好きな丈太郎の方がちょっと浮いている感じがしてしまうのは、なんか本屋もそんな感じだよなぁ、とか思ってしまいました。

感想

時代小説として読んだらどうなのか、というのは僕にはイマイチ判断できないですけど、でも時代小説をほぼ読まない僕でも楽しく読めました。将軍家の本を扱う職業の人達の話として読むと、本好きの人には結構面白いんじゃないかなぁ、と思います。読んでみてください。

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