煌びやかに結晶化し、世界が時間を失っていく物語。結晶世界のあらすじ・感想

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結晶世界 (創元SF文庫)

あらすじ

カメルーンのとある籟病院(ハンセン病治療院)で副院長を務めるサンダーズ博士は、不倫相手だった女性から1通の手紙をもらう。
サンダーズ博士はその手紙の文面から彼女の精神状態にかんする不穏な含みを感じ、休暇を取って会いに行くことに。
手紙の差出人住所欄は塗りつぶされていたが、以前同僚だった彼女が、今では僻地のある村で夫とともに病院を営んでいることは知っていた。

船に乗り、彼女がいる村の最寄りの町までたどり着くと、なぜか軍人たちが物々しく警備している。
村への交通手段を探すものの、道路が閉鎖されており、村民への連絡もつかない。

明らかに異常事態だったが、そのことを訊ねても、町の人間は要領を得ないことばかり。
なんとか手がかりを得ようと情報収拾をする内、サンダーズ博士は不倫相手の女性の面影を持つ、若い女性記者と出会う。2人は逢瀬を重ねるが、そんな折、右腕が結晶した水死体が引きあがり……。

感想

結晶化する世界を描く、というのだからパニックスリラーかと思いきや、ストーリーは極めてゆるやかに、どこか倦怠感を伴って展開されていく。

人々の明確なパニックは描かれず、視点は主人公のサンダーズにほぼ固定。登場人物も片手で足りてしまうほどこじんまりとした構成だった。

痴話を軸にしているが、根っこには生きるということに対するどうしようもない諦めと虚無感が漂っている……ような気がする。

もっと科学科学したアウトブレイク系のSF小説を期待していたので、個人的に肩すかしの感はいなめない。しかしそれでも結晶化が人間の精神に与えた影響や、美麗な結晶世界の描写が楽しめた。非常に惹きのあるビジュアルであるため、いずれ映画化されるのではあるまいか。

結晶世界 (創元SF文庫)

結晶世界 (創元SF文庫)

  • J・G・バラード

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