秘密保護法で封殺される「知る権利」と「表現の自由」

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秘密保護法は何をねらうか

 本書は2013年10月25日に安倍政権が国会に上程した、「特定秘密の保護に関する法律案(以下、秘密保護法案)」の問題点に極めて強い危機意識を持って緊急出版された、行政権力監視の目を育む啓発本である。
 メディア規制問題、防衛省・自衛隊取材に長年取り組んできた2人のジャーナリストと、1980年代の中曽根政権時代から「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」に反対運動を行って廃止に追い込んできた学生から憲法学者へ転身したという、各自の専門分野から三章構成で同法案の危険性を鋭く指摘している。
 ここでは毎日新聞記者の䑓宏士氏による「秘密保護法と言論統制」問題に触れて、脅かされる市民の「知る権利」と「表現の自由」の問題点を主に取り上げる。
 秘密保護法制の整備に向けた日本政府の取り組みの歴史は、2007年の第一次安倍政権に始まり、続く福田政権へと受け継がれる。しかし民主党による政権交代が起き、一時頓挫。管政権時の2010年に沖縄・尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船衝突事件の動画流出事件と共に、国際テロに関する捜査資料ネット流出事件が勃発した。これを契機に2011年年頭から自公政権時代に中断していた「有識者会議」が顔ぶれを変えて再開される。だが、2011年8月に「報告書」が提出されるも、NPO情報公開クリアリングハウスが自公政権時代の資料を情報公開請求したところ、非開示となり、資料は黒に塗り潰されていた。
 2012年にTBS系列で放映されたドラマ「運命の人」(山崎豊子原作)のモデルとなった、「西山事件」に関わる沖縄密約の文書の存在自体、これまで政府は認めてこなかった。しかし今般、同法案を巡るジャーナリストの取材攻勢の中、森雅子秘密保護法担当大臣は「西山事件は秘密保護法によれば処罰対象になる」と明言。
 十分な審議を尽くさず、猛反対の民意を無視してまでの強行採決を急いだ安倍政権動勢の裏には、米国とあらかじめ年内立法化の密約を交わしていたためではないかとの報道も一部見られる。その米国では2013年に「スノーデン事件」が起こった。現在ロシアに亡命中の元米中央情報局(CIA)職員だったエドワード・スノーデン氏が米国家安全保障局(NSA)の個人情報収集問題を暴露した事件。この事件を契機として、英国ではガーディアン紙が英国諜報機関による承認を受けてNSAと水面下で秘密取引を交わしていた米国が、英国市民の携帯やインターネット、eメールの情報を不正に分析し、収集データ蓄積していたことが分かったと報じるなど、米、英、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ間では「ファイブ・アイズ」と呼ばれる情報共有同盟が既に結ばれているという。
 元NYタイムズの記者でフリージャーナリストのクリス・ヘッジズ氏(ピューリッツァー賞受賞)は、「ハモンド、スノーデン、マニング、アサンジ、ブラウンのような人物なしに報道の自由はない」と指摘している。 
 このように単に個人情報保護の観点からだけではなく、公益通報者や内部告発者の保護と受け手側の保護をいかに守るかが、世界的に見ても長い歴史の中で改めて考えるべき普遍的なテーゼとなっている。
 殊、日本で秘密保護法案と関係してくる3.11原発問題の当事者にとって、官公庁の発表や規制に縛られない調査報道に基づく潜入取材による情報は貴重である。福島第一原発事故の敷地内立ち入り取材が政府によって制限されていたため、フリージャーナリストたちは作業員の身分で取材し、実態を暴いてきた。このため表現者は過敏に問題提起し、反対してきたのである。

秘密保護法は何をねらうか

秘密保護法は何をねらうか

  • 臺宏士 清水雅彦 半田滋

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