科学者として言う。国は徹底した測定、除染を行う責任がある

2650views折笠 隆折笠 隆

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内部被曝の真実 (幻冬舎新書)

概要

著者は東京大学アイソトープ総合センター長。放射線防護に詳しい。

原発事故で南相馬市の除染に携わる。科学者としての責務に基づき、危機の認識徹底と詳細な測定、技術を結集した除染を訴える。

7・27衆議院厚生労働委員会・全発言

厚生労働委員会で参考人として意見説明を行った。要旨は

・熱量による計算では、原発事故で広島原爆29.6個分が漏出
・稲わらからセシウム。震災直後の混乱期に通知一つで農家への伝達は無理
・現地は測定機器不足。技術はあるのに政府はなぜ金を使わない
・放射線に弱いのは細胞分裂時。妊婦の胎児や幼児は感受性が高い
・内部被曝は蓄積した各臓器を見ないと分からない。全身を測定しても無意味
・p53のようなガン抑制遺伝子が破壊され、発症まで20~30年
・緊急避難的な除染と恒久的除染は別物

具体的な提案として
1 国策として食品、水、土壌の測定を
2 新法律の制定。きちんと除染すると障防法に抵触してしまう
3 除染には民間の技術を結集せよ
4 財源は国が負担し、即刻除染を

7万人が家を離れて苦しんでいるときに、国会は一体何をやっているのか。

疑問と批判に答える

◆政府はデータが揃っていないからSPEEDIの公表を控えたというが、足りないからこそ予測が大事。

◆「危険は危険」と伝えたうえで、苦労するけどやっていこうと促すのが専門家。「伝えてしまうと不都合」と折り合いをつけてしまったら、それは政治家だ。

チェルノブイリ原発事故から甲状腺がんの発症を学ぶ

◆チェルノブイリでは91年に甲状腺がん増加が報告されたが、母集団不足など懐疑的な意見が出される。ようやく05年に、がんは原発事故起因と認められたが、すでに小児がん発症は終息。

◆甲状腺以外のがん増加の証明がない。甲状腺はRET遺伝子が変異しやすく、短期にエビデンス(証拠)を得やすかったのだろう。それでも立証に20年。

◆現場の医療従事者は、多数の軽微な変化より極端な少数例に着目し、因果関係の立証を待たず即座に対応を。

チェルノブイリ膀胱炎

◆セシウムは強いγ線とβ線を出す。体内に入ると胃腸から吸収され筋肉・肝臓に分布し、100~200日で腎臓から尿中へ排泄される。

◆チェルノブイリでセシウム137を研究した福島博士は、汚染地域の住人の膀胱に前がん性病変を発見し「チェルノブイリ膀胱炎」を提唱。膀胱がん増加報告は事故から実に23年後。

◆1962年、猿橋博士の微量放射能検出の実験を機に、米が成層圏での核実験を中止。科学者の信念は世界を動かせる。

私はなぜ国会に行ったか

◆専門家は「一見こう見えるが実はこうだ」ということを、本質を見据えて予測する人。歴史と知識から、危機を未然に防ぐ知恵を授ける人。

◆参考人の依頼を受け迷っていたなか、除染活動を手伝っていた南相馬の牛からセシウムが出て衝撃を受けた。思わぬ場所で濃縮が起きている。徹底した測定で現状を把握しなければ。

◆なのにメディアは、問題を矮小化し農家を責め始めた。違う。専門家として正しい知識と対策を伝える必要を痛感し、国会行きを決意する。

◆提言のポイントは4つ。
(1)最新技術での食品検査(2)住宅汚染を検出する「すぐやる課」の創設(3)緊急除染では土埃に注意(4)行政による長期的除染は住民同意で

◆人が汚したものを人がきれいにできないわけがない。そのために全力を尽くすのが科学者の責務。(国会で)そう思って話し出したら抑えきれなくなった。感情的になり申し訳ない。

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