世の中で起こる様々な「見て見ぬふりをする社会」の書評・感想

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見て見ぬふりをする社会

まさにタイトル通りの本で、世の中で起こる様々な「見て見ぬふり」を取り上げた作品。本書が他の作品と若干毛色が違う点を指摘するとすれば、それは著者が学者ではない、という点だ。通常本書のような作品は、心理学系の学者によって書かれることが多いと思いますが、本書の著者は様々な企業の役員や社長をしている人物のようで、だからこそ、取り上げられている事例が現実に軸足を置いたものが多いような気がします

『大規模な事故や災害の前には、後悔してもしきれないパターンがある事が多い。早い時期に何度も警告(シグナル)が発せられていたのに無視されていたとか、基本的な想定に誰も疑問を持たずにいたなどの状態があって、そこに災害が起こると、後になって、あのときちゃんと情報を理解していたら防げたと知り、さらに苦しみが大きくなる。このパターンは911の同時多発テロや、西側の経済を襲っている金融危機や、福島原子力発電所の事故に顕著に見られる。それぞれの出来事は悲劇的だが、これほど被害が大きくなったのは人災であり、防ぐ事ができたという事実が、混乱した状況をさらに苦しいものにしている』

これは本書の冒頭である「日本語版刊行に寄せて」の最初の部分だ。この後に続けて著者は、福島第一原発事故について触れている。著者によれば、「すべての証拠が揃ってみると、福島は典型的な見て見ぬふりの事例だ」となる

『小さな出来事が続いて起こっていたというのも典型的だ。弱いシグナルが出ていても、それ自体にはそれほど大きな意味がないので、見過ごされることが多い。こういうシグナルは積み重ならないと意味を持たないのだ。そして、誠実で、こうしたシグナルに警戒している従業員は、騒ぎを起こしすぎだと批判されやすい。実際は、経営者自身が問題へとつながるパターンが出ていないか、注意深く観察するべきなのに』

『もっとも重要なのは、彼らが―そうではないと革新できるような根拠がないかぎり―悪いニュースは絶対に歓迎されないと考えていることだ。私は世界でも指折りのすばらしい組織のいくつかで仕事をしてきたが、どこでも従業員たちはこうした考えを持っていた。悪いニュースを報告しても、善意の対応を受けると思っている者は誰もいない』

本書を読めば誰にでも理解できることだが、「見て見ぬふり」は、個人の資質によるものではない(そういう場合もあるが)。それは、誰にでも起こりうる。自分だけは大丈夫、と思っている人はたくさんいるだろうが(僕もそうだ)、しかしそれは、たまたまこれまでそういう状態に出くわさなかっただけだ(いや、あるいは、既に今の時点で見て見ぬふりをしているのだけど、それに気づいていないだけかもしれない。これも、十分にあり得る話だ)。本書で様々な具体例が提示されるが、自分だけはその罠に陥るはずがない、と思うことは止めた方がいい。あらゆる心理学の実験が、そして現実に起こった様々な事件が、そのことを如実に示している。僕達に出来ることは、どんな風に見て見ぬふりが現実に起こり得るのかを知り、意識に留めておくことぐらいだ。だからこそ本書のような本を読んでおいた方がいいと僕は思う。「オレオレ詐欺」という詐欺の方法がある、という事実を知っていれば、まだ多少対処の余地が出てくるのと同じように、世の中にこんな見て見ぬふりの事例があるのだと知ることが、あなたの現実の行動に少しは影響を与えるかもしれない

本書は、各章毎にそれぞれテーマが違う。11の章で様々な「見て見ぬふり」の事例が紹介され、最後の第12章で、「見て見ぬふりに陥らないために」という文章が続く

感想

「見て見ぬふりに陥らないために」はまだ読めていないので、どんなことが書かれているかわからないのだけど、とにかく僕達は、あらゆる「見て見ぬふり」の罠に掛かってしまう可能性があるのだという自覚を持っておいた方がいい。自分だけは大丈夫、という考えこそが、さらに「見て見ぬふり」を助長させるのだということを肝に命じた方がいいのだろうと思う。それはなかなか難しいことだろうけど、見て見ぬふりが個人の人生や社会にどれだけ大きな影響をもたらすのか、本書を読めば様々な実例と共に知ることが出来る。油断は禁物だ。あなたの人生のどこかにもきっと、「見て見ぬふり」という落とし穴が待ち構えているはずだ。少しでも見て見ぬふりへの意識を強めるために、是非読んでみてください。

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