現役官僚が綴る原発行政の裏側

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原発ホワイトアウト

筆者は現役官僚

 筆者の「若杉 冽」はペンネーム。筆者紹介欄には「東京大学法学部卒業。国家公務員Ⅰ種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務。」とある。本書には筆者が見聞きした多くの事実が含まれているのだろう。小説という形式をとっているのは、国家公務員法100条で定められる守秘義務違反を回避するためと推測される。ネット情報によると、霞が関では犯人捜しが行われているらしい。

総括原価方式

 東電をはじめとする電力会社が電気を作るためには原発建設など様々な経費がかかる。電気料金の決定には「総括原価方式」が採用されており、かかった経費に一定の報酬率を乗じた額を電気料金として徴収できることになっている。経費をかければかけるほど報酬額が上がるので、なるべく経費をかけるインセンティブが働く。そのため、外注額も2割ほど割高になっている。受注先の企業はそのうちの4%(約800億円)を預託し、国会議員への献金などに充てる。このようにして、国会議員は電力業界に有利に動くようになる。

官僚・電力会社の歪んだ賢さ

 電力自由化が叫ばれている。当然、何もせずとも得られる2割高の甘い汁を失いたくない電力業界は反対である。しかし、国民を納得させなければならない。そこで、色々な論法で国民を煙に巻く。

vs 発送電分離
 国民には発送電分離をやると言うが、法的分離で実現することにする。所有権分離ではなく法的分離では、今の電力会社の発電部門と送電部門を法的に分ければ良いだけである。その結果、今とほとんど変わらずに発送電分離を実現できる。

vs クリーンエネルギー
 クリーンエネルギーは理念は素晴らしいが、不安定。諸外国は原発を増やしている。日本が原発を再稼働しなければ経済的に遅れを取る。よって、クリーンエネルギーだけに頼るのはNGという論法。

vs 原発再稼働は危険との世論
 新たな審査基準を作り、その基準を守る原発だけを動かすようにするので安全という論法。しかし、この基準は世界的に見てレベルの低い基準となっているし、審査を行う役人もレベルが低い。そのため、基準はほとんど意味をなさない。

邪魔な存在は排除

 新潟県知事は原発反対派。原発再稼働には知事の同意が必要であるため、電力業界にとっては新潟県知事は邪魔な存在。そこで電力業界は手先企業に、↓のように知事の親族が経営する企業に割高で事業を発注させる。
  新潟県→(事業の外注)→電機業界の手先企業→(割高で事業を発注)→知事の親族が経営する企業
その後、新潟県知事が、知事の親族に不当に便宜を図ったというストーリーを作り新聞にリークさせ、最終的には逮捕させる。

感想

どこまでが事実なのか分からないが、原発行政の裏側が分かる良書。官僚は賢いと言われるが、それは既得権益や組織を守るための歪んだ賢さであることがよく分かる。国・電力会社といったモンスターに立ち向かうためには、国民一人一人がしっかり勉強して声を上げていくほか無い。

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