災害ユートピア(レベッカ・ソルニット)の書評・感想

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災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか

内容に入ろうと思います。
のですが、本書は、僕には若干難しめな本で、すんなり読めたわけでもなく、また内容をきちんと把握できているわけでもありません。なので僕は、本書が描く様々な要素の内、3つだけを特に取り上げて感想を書こうと思います。
本書は、平たく説明すれば、「災害が起こった時、人々はどう行動するか」について、過去の様々な研究結果や、著者自身の手によるインタビューなどから、多角的に検証をしている作品です。
僕が本書から抜き出そうとしている三つの要素は、

◯ 普通の人々の間にはパニックは起きない
◯ エリートたちはパニックに陥る
◯ 災害は様々な「革命」をもたらす可能性を持つ

という三つだ。

『地震、爆撃、大嵐などの直後には緊迫した状況の中で誰もが利他的になり、自身や身内のみならず隣人や見も知らぬ人々に対してさえ、まず思いやりを示す。大惨事に直面すると、人間は利己的になり、パニックに陥り、退行現象が起きて野蛮になるという一般的なイメージがあるが、それは真実はとは程遠い。二次大戦の爆撃から、洪水、竜巻、地震、大嵐にいたるまで、三次が起きたときの世界中の人々の行動についての何十年もの綿密な社会学的調査の結果が、これを裏付けている』

『切迫した恐ろしい状況に置かれた人々に関する研究結果を、クアランテリは災害学につきものの素っ気ない表現で、次のように記している。「残忍な争いがおきることはなく、社会秩序も崩壊しない。利己的な行動より、協力的なそれのほうが圧倒的に多い」』

クアランテリという災害学者は、「パニックの事例を多く発見できると信じて、それをテーマに修士論文を書き始めたが、しばらくすると「どうしよう。パニックについての論文を書きたいのに、一つも事例が見つからない」という羽目になった」とも書いている。
本書では、サンフランシスコやメキシコシティの大地震、ハリケーン・カトリーナやスリーマイル島の事故、そして9.11など、様々な災害を取り上げ、その時に人々がどう行動したのかを分析している。本書は東日本大震災以前に出版された作品だが、もし東日本大震災の後に出版される予定であればその事例も含まれたことだろう。
東日本大震災では、暴動や略奪が起きず、皆が助けあっていることが、世界中で賞賛されたように思う。日本人は素晴らしい、と。確かに、東日本大震災に直面した人たちの態度は素晴らしかったのだと思う。けれども本書を読んで、それは、どんな災害時にも、どんな民族にも当てはまる、普遍的な行動なのではないかと思わされた。本書で挙げられているどんな災害においても、「普通の人々」の間ではパニックは起こっていない。それどころか、あれほど素晴らしい一日はなかった、と評す人さえ大勢いるのだ。

『サンフランシスコの全歴史の中で、あの恐怖の夜ほど人々が親切で礼儀正しかったことはない』

『多くの人が亡くなり負傷した夜に、不謹慎かもしれないけれど、わたしの一生であれほど純粋で一点の曇りもない幸せを感じたことはありません』

『テロリストたちは、わたしたちを恐怖に陥れることに失敗した。わたしたちは冷静だった。もし、わたしたちを殺したいなら、放っておいてくれ。わたしたちは自分のことは自分でやれる。もし、わたしたちをより強くしたいなら、攻撃すればいい。わたしたちは団結する。これはアメリカ合衆国に対するテロの究極の失敗例だ。最初の航空機が乗っ取られた瞬間から、民主主義が勝利した』

感想

災害は、様々な被害をもたらし、特に取り返しがつかないほど人命が奪われることも多い。しかし、そのようなマイナスの側面だけではない。エリートや権力者による暴走はあれど、希薄だったコミュニティが復活し、また限界を迎えていたシステムやルールをリセットし、新しい仕組みを生み出すきっかけにもなる。本書は、なかなかスイスイと読めるような易しい本ではないと思うけど(べらぼうに難しいわけでもないけど)、ハリウッド映画などによって植えつけられた、災害時の人々の行動についてのイメージを一新させてくれる作品だと思います。是非読んでみてください。

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