悪い意味のことばは敬語化しない! 慣用句、慣用語は敬語化しない!

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敬語力をつけるコツ 信頼できる人間関係を築くために

1.あまりよい意味でないことばは敬語化しない

×「昨晩、お宅にお強盗がおはいりになったそうで、たいへんでございましたね」

本人はまじめに、強盗にはいられた相手に対して、同情の気持ちをあらわそうとしているつもりかもしれません。しかし、その気持ちとは逆に、〝どうもおかしいぞ〟と思われてもしかたのないことばづかいです。

同情されたり、敬語を使わなければならないのは、強盗ではなく、強盗にはいられた被害者のほうですから、これでは素直に受けとめることができません。ここの「はいる」は強盗の行為です。悪い強盗に「お」をつけたり、「はいる」を「おはいりになる」と尊敬語にするのは、まことに滑稽なことです。悪い感情をあらわす語とか俗語は、本来、敬意と無関係です。このような場合には敬語を使う必要はありません。

×「少しおあがりになっていらっしゃいましたね。もっと楽にお話しなさるといいですね」

ある話し方教室であったことばづかいです。実地練習のとき、受講生がとても緊張して話したためでしょうか、それを批評した先生のことばがふるっていたというので、いまでも話題になっています。

話し方を教えている講師が、こんな批評のしかたでは困ったものです。「あがる」というような、あまりよい意味でないことばは、尊敬語にしないのがことばづかいの原則です。

「『おあがりになっている』と言うようでは、あがっていたのは先生のほうじゃないか」と批評された当人が、あとで皮肉を言ったそうです。たしかに、批評する先生のほうが、力んでいたのかもしれません。

×「鏡をご覧になってはどうですか、おつらに何かついているようです」

顔に墨のような泥がついているのを見かけた人が、このように注意したというのです。この人は親切に教えたつもりだったのでしょうが、ふだん使いなれないことばを使ったために、そうなったのかもしれません。「お顔」ならいいのですが、「つら」に「お」をつけるのはどうもいただけません。ふだん使いなれないことばを使うと、このようにチグハグになり、メッキがはげてしまうものです。

2.慣用句、慣用語は敬語化しない

×「ずいぶん遅かったですね。また、どこかで油をお売りになっていらしたのではないですか」

×「猿も木からお落ちになるというじゃありませんか、ときには、だれだって失敗することもありますよ」

「油を売る」は慣用句ですから、そのまま、まとまったことばとして使うべきものです。「お落ちになる」では、猿に尊敬語を使っていることになります。

×「ご予算に応じて、最初からしっかり計画をたてますので、足をお出しになるようなことはありません」

足を出すのは、たしかに客かもしれません。でも「足を出す」は、これで一つの句として使っているものですから、慣用句として、そのままの形で使うべきです。

×「あの人、ほんとにひどい人ね。他人のことばづかいが悪いって、いつも言っているのよ。自分のことをタナにおあげになって」

ひどいのは話し手のほうじゃないですか。「タナにあげる」という慣用句を飾ってみても始まりません。そのことばがどんな意味をもっているのか、どんなときに使うべきかがわかっていなければ、そのことばを使ったためにかえってみずからの教養の低さを暴露してしまうことになってしまいます。

感想

敬語本だけでなく、会話系の本を多く出版されている永崎一則さんの著書。懇切丁寧なのでおすすめかと思われる。敬語本としては85点。

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