女子学生、渡辺京二に会いに行くの書評・感想

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女子学生、渡辺京二に会いに行く

内容に入ろうと思います。
本書は、三砂ちづる氏が津田塾大学で受け持っている「多文化・国際協力コース ウェルネスユニット」というゼミ生が、ひょんなことから、評論家である渡辺京二氏と合宿をすることになり、熊本県にある真宗寺での二日間に渡る勉強会を書籍化した作品です。在ゼミ生と卒業生合わせて10名ほどで熊本まで趣き、自身がゼミや大学院で研究をした内容、まさに今している内容を渡辺京二氏にぶつけ、議論をするという内容になっています。
本書は、議論というよりは、渡辺京二氏の演説というのが近くて、渡辺京二氏は自分の考えていることを思いつくままに喋る。しかしそれは、何らかの結論に着地させようとしているわけではない。発表者の意見やスタンスを尊重しつつ、その範囲内で自分だったらどんなことが言えるか、ということを考えて話している感じが伺えます。なので、本書を読んでも、結論が出てくるわけではありません。問題に対する結論を求めてしまう人には、本書は向かないでしょう。
本書は、「問題をよりクリアにすること」、そして「自分が抱いた問題をずっと持ち続けること」の二つを、強く教えてくれる作品です。女子学生たちは、渡辺京二氏と喋ることで、「解決に至る」のではなく、「自分が抱えている問題をより明瞭に認識する」ようになる。これが、彼女たちの合宿の最大の成果だったといえるでしょう

作品全体としてはそういう本なわけですが、僕としては、本書の中に随所に登場する色んな価値観に救われる気がしました
三砂ちづる氏は本書のことを、「多くの「今を生きることがつらい」人たちに届けられている」作品だと書いています。確かに、そういう側面もかなり強くある。僕も、どうしても「生きることがつらい」と思ってしまう人で、そういうことについてこれまでも様々なことを考えてきたんだけど、こうやって様々な方向から、自分の内側にはなかった(あるいは、あったはずなんだけど隠れてしまった)考え方を取り込むことも、人生に対抗する手段です。
著者の言葉で、一番グッと来たのがこれです

『大切なのは、その実現されている自己を、たとえば自分は人とのつきあいがあんまりうまくいかないとか、集団というのがあんまり好きじゃないとか、あるいは言葉でうまく表現ができないとか、そういうふうな自分の性格があるとしたならば、自分のその性格というものを磨くことなんですね。まかりまちがっても、自分はあんまり社交的な人間ではない、だから自己啓発だとか言って、自分を作り替えようなどとしないことですね。自己啓発講座というものがあるらしいね。自分が今まで気づかなかった自分に目覚めようとかいうことになるんでしょうが、自分で気づかなかった自分なんていやしないんだから、そんなものは。
たとえば人とつきあうのが苦手な人間だとすれば、社交的な人間になろうとしても、付け焼き刃にしかならないんです。まあ多少は努力しなきゃいかん、この世の中で生きているんだから。でも、そういうものは後から自分で付け加えたもの、本当の自分じゃないということですね。根本なのは、人付き合いが悪い自分、というものを深めることです。磨くことです。人付き合いの悪い自分というものを肯定することです。肯定して、そういう自分というものを伸ばすことです。そういう自分として生きていくことです』

これはとてもいいなと思いました。僕も、やっぱり考えてしまうことがあるんです。こういう発想をしたことはなかったので、なるほどこれなら出来るかもしれない!とちょっとワクワクしました。ちょっとこの考え方を、意識してみようと思いました

感想

本当に僕は、こういうことを、親とか学校の先生が言ってくれたらいいんだけどな、と思ってしまいます。まあ、思春期の頃なんか、どのみち親とか教師のことなんか聞きゃしないわけだから、こういうことを実際に言ってくれる人がいても、聞かなかったかもしれないですけどね(もっと言えば、そういう親や教師はいたかもしれないけど、自分が聞いていなかっただけ、という可能性もありますけどね)
女子学生とのやり取り(ほぼ渡辺京二氏の独演だけど)も面白いけど、そういう、生きづらさを抱えている人に向けられた言葉も、結構響く作品ではないかと思います。是非読んでみて下さい。

女子学生、渡辺京二に会いに行く

女子学生、渡辺京二に会いに行く

  • 渡辺 京二×津田塾大学三砂ちづるゼミ

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