FABとは何なのか?

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Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

(1)ものづくりとは

・MITにしては技術も知識も少ない学生が並々ならぬ関心を抱いたことも不思議だったが、それだけでなく、受講を希望した動機にも驚かされた。研究のために受講したいという学生がほとんどいなかったのだ。学生たちの行動を後押ししていたのは、「ずっと欲しかったけど、どこにも売っていないものをつくりたい」という素直な欲求だった。
・現在私たちが当たり前のように利用している大量生産のインフラストラクチャがなかった頃のものづくりは、プロフェッショナルの仕事というよりはサバイバル(生きのびるための)手段だった。
・テクノロジーが進歩し、パソコンが安く簡単に製造できるようになったことでパソコンは広く普及した。それよりずっと前に、ミニコンピュータはパソコンの最終的な用途を示していた。それは、ワープロソフトであり、電子メールであり、インターネットだった。
・コンピュータの能力をうまく活用するには、ビットから構成される仮想世界だけでなく、アトムから構成される物質を作り出し、測定し、加工する手段が必要なのだ。
・ファブラボでの経験が教えてくれたのはそれと逆で、発展から取り残されている地域ほど最先端のテクノロジーを必要としていることだった。
・ソフトウェアの実行に必要な大型汎用コンピュータを購入できるのが大企業に限られていたことから、初期の商用ソフトウェアは、大企業によって大企業のために作成された。
・独自のビジネスモデルに必要なのは、コンテンツを作成し、サービスを提供することで、ソフトウェアに価値を付加することだ。新旧を問わず、儲かっている企業は、実際この方法で無償のソフトウェアから利益を生み出している。つまり、問題を解決するうえで自社が果たす役割に対する対価を受け取っているのだ。
・コンピュータの世界と同様に、工業生産の世界でも、これまで長い歳月にわたって、生産手段の所有・非所有が経営者と労働者とを分かつ基準になっていた。しかし、工業生産の手段が簡単に入手できるようになり、設計を無償で共有できるようになれば、ハードウェアもソフトウェアと同じ進化の道をたどる可能性が高い。オープンソースソフトウェアと同様に、オープンソースハードウェアは、簡単な機能のものから始まり、やがてはパーソナルファブリケーションのような「オモチャ」に「本物の機械」の肩代わりができるわけがないと高をくくっている会社の足をすくうことにまでなるだろう。
・しかし、たった一人しかいない市場であれば、試作品がすなわち製品になる。
・パーソナルファブリケーションを実現するうえで最大の障害は、技術的なものではない。技術的にはほとんど実現段階にある。問題は研修でもない。MITと同様に、どこの現場でも、仲間が教え合うジャストインタイム方式がうまく機能する。
・起業家、技術者、評論家たちがコンピュータの次のキラーアプリケーションを血眼になって探しているが、コンピュータを利用したものづくりこそがコンピューティングの世界でこれから起きる最大のイベントなのである。

(2)過去

・そうなれば、それ以前のすべての革命を置き換えるのではなく、むしろ包含するような革命が起きるだろう。工業生産と個人的な表現が一体化し、それがデジタル設計に統合され、常識と感性が高度なテクノロジーの創造と応用を支配するようになるだろう。
・この革命は間違いなく起きる。なぜ確信を持ってそう言えるかといえば、それが「現在すでに起こり始めていること」であるからだ。ものづくりのパーソナル化に使われるすべのテクノロジーは、既に研究室で稼働しており、少数ではあるものの現実に存在する研究室外部のユーザーコミュニティで現に使われている。

(3)現在

・ラピッドプロトタイピングの最終的な目標は、構造材料だけではなく、機能材料を使って、完全に機能する工学的システムをプリントすることだ。
・一方、コンピューティングの発達により、PCの中核となるマイクロプロセッサは、製品に埋め込み可能な小型の単純なコンピュータであるマイクロコントローラチップへと進化を遂げた。ミッチ、ミッチの同僚フレッド・マーティン、ブライアン・シルバーマン、ランディ・サージェントは、マイクロコントローラを使って積み木のブロックほどの大きさのレゴ/LOGOコントローラを開発した。それが発展したものがロボット組み立てキット「マインドストーム」である。
・本格的な仕事向けのテクノロジーと本格的な遊び向けのテクノロジーの間には、ほとんど差がないのだ。
・通信速度を遅くして、ひとつの信号が特定のネットワークに行き渡ってから、次の信号が送信されるようにすれば、ネットワークの特性を無視して、複数のネットワークをまたがって同じ表現形式を利用することができる(インターネット0)
・そこで力の源になっていたのは、所有ではなく、知識だった。
・しかし、このようなコミュニティをツールやテクノロジーで支援するのは、だれなのだろうか。ものをつくるためではなく、破壊するために存在する軍隊だろうか。投資の及ぼす社会的影響の定量化を要求し、不確定性リスクを嫌う支援機関だろうか。不確定性リスクの調査は支援するが、援助の要素は排除したがる研究機関だろうか。消費者の開発した商品を購入するというよりは、消費者に売るための商品を開発する企業だろうか。確実な答えはない。しかし、答えがないこと自体が答えなのだ。

(4)未来

・フォン・ノイマンは、計算でエラーが許容されることを証明することによって、不完全な論理要素が完全な論理演算を実行できることを示し〜〜
・つくべきものに関するすべての情報が素材の内部にコード化されているため、設計と製造が一体化しているタイルはメディアであると同時に、自分自身を組み立てる手順を内部に持つメディアのメッセージでもある(プログラミング可能な素材)。
※DNAポリメラーゼのエラー発生率は10億分の1。
・リボソームのように構築の方法を指示するコードが組み込まれた素材と、計算しながら構築するツールを利用するデジタルファブリケーションが、製造技術の革命をもたらすことがわかる。
・アボガドロ定数規模の複雑性を実現するには、あたし威高額設計の手法が必要だ。10の23乗個の部品を配置する場所を従来のCADファイルで指定するとなれば、そのファイルは、製造される物体と同様に巨大なものになるだろう。それより問題なのは、何百万点、何十億点もの部品を持つシステムの想定外の振る舞いに翻弄されている現在のエンジニアたちの姿を見る限り、10の23乗個もの部品を持つシステムが、設計者の意図通りに動作するとはとても思えないことだ。
・デジタルファブリケーションの開発に関連する研究の最前線では、動作を実行する具体的な方法は指定せずに、きわめて複雑な機械に実行させる動作のみを指定する関係性設計理論(associated desgin theory)への取り組みが行われている。
・そこでの課題は、現在のエンジニアが飛行機やコンピュータチップの仕様を定めるときの厳密さをもって、これまでにない大規模な工学設計を行うことだ。
・生物の生態をヒントに設計された回路や構造物は、模型を使った実験でうまく機能したとしても、実際の厳しい使用環境で機能し続ける保証はない。むしろ、この種の研究から浮かび上がってくるのは、生物学のリバースエンジニアリングではなく、むしろフォワードエンジニアリングを行うことで、問題の正確な定義と、工学設計の目的の明確な理解から、逆に生物に似たシステムの設計を厳密に導く手法の可能性だ。
・純粋に現象論的に見れば、自分自身を複製し、プログラミングし、リサイクルすることができる計算機は、生体システムの基本的な属性を備えているといえる。

感想

FABの未来の章は特に面白い。大学で生物学を学んだこともあり、新しい工学設計の概念が、リバースエンジニアリングの限界を克服する日が来るかもしれないと感じた。

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