米国ニューシネマ作品の隠れた意図や背景を語る町山智浩の映画解説本「映画の見方がわかる本」

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映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)

脚本やインタビュー記事などを元に、米国ニューシネマ作品の隠れた意図や背景を語る町山智浩の映画解説本「映画の見方がわかる本」

「映画は裏付けを取ってから語る」 を信条にする著者が、原作や脚本、当時のインタビュー記事などを元に、原作者・監督・脚本家・プロデューサー・俳優などの生い立ちや制作時のエピソード、作られた時代の背景、映画に隠された主題や影響を語る。
文量の都合上、3章 『猿の惑星』 シリーズ (人種問題や核兵器など)、4章 『フレンチ・コネクション』『ダーティハリー』(自警主義)、5章 『時計じかけのオレンジ』(自由意志)、6章 『地獄の黙示録』、7章 『タクシードライバー』(孤独と自意識)、9章 『スピルバーグ』(子供の通過儀礼、男が父になるまで、等) の要約は割愛。

1章:2001年宇宙の旅

本作が 『オデッセイア』 を踏襲した 「王の帰還」 物語の一典型なこと、ニーチェの 「超人」 と同じキリスト教的な神の解体が主題なこと、キリスト教的価値観への不信高まる60年代末の米国でカルト的人気を得たことを解説。『イージーライダー』 に影響を与え、ハリウッド神話解体が始まる。

2章:米国ニューシネマ

60年代米国では多分野でカウンターカルチャーが起こるが、反してハリウッド業界では表現規制・アカ狩り・大手映画会社社員の高齢化 (老害化) 等が原因で差し障りのない凡庸な映画のみが制作され、その波に乗れず困窮していた。そんな状況に不満を抱いた分子たちが 『俺たちに明日はない』『卒業』『イージーライダー』 を撮った経緯を解説。これらの成功により業界には若造や門外漢が多数流入、これまでの定型に囚われない映画を作る 「映画作家」 が生まれ、商業的には苦しくも質的には黄金期を迎える。だが、「ニューシネマ=既成の価値観への異議申し立て」 はその代替となる新しい価値観を用意できず、また、カウンターカルチャーの失敗を投影して映画は常に反逆者の敗北で終わる結末であり、その前途は多難だった。

8章:ロッキー

60年代以前の米映画を少年期 (親を尊敬し、正義を疑わず、英雄に憧れる)、常に主人公たちの敗北で終わるニューシネマを思春期 (世の不条理を知る、挫折感というナルシズム) とし、本作をその先に位置付ける。どん底生活にあった監督・脚本・主演のスタローンが本作を撮る過程を語り、「カウンターカルチャーの挫折で自己嫌悪に陥り、悲観的なニューシネマに次第に疲れを感じていた米国人を元気付けた」「黒人が文化をリードするブラックパワー時代から、白人が “アメリカン・ヒーロー” を奪還した」「選ばれた人間ではなく普通の男を主役にした本作や 『JAWS』『スターウォーズ』 が、ニューシネマにより滅んだ “ヒーロー” という概念を再生した」と解説。ニューシネマ時代が終わり、ハリウッドは経済的・精神的に立ち直る。だが、本作のヒットを契機に、ハリウッド映画は 「無敵の英雄」 を主役にした勧善懲悪で現実逃避的な物語に幼児退行してしまったとも。

本著後書き

『ゴッドファーザー』 になぞらえ、70年代に 「見世物」 から 「作品」 となった米映画は、80年代以後は 「製品」(ビジネス) となり、元通りに、むしろ悪化したと語る。だが、ハリウッド映画の思春期時代の作品はフィルムに遺され、今でも観ることが出来ると結ぶ。

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