政治主導のあるべき姿がここにある!!

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内閣政治と「大蔵省支配」―政治主導の条件 (中公叢書)

本書の構成

○第1章・・・「官房型官僚」というこれまでほとんど指摘されてこなかった類型の官僚に触れて、大蔵省の「調査の政治」について説明。

○第2章・第3章・・・吉田内閣の政令諮問委員会や国会法改正という改革のなか、大蔵省大臣官房調査課がいかにして大蔵省内の主導権を掌握したかを分析。

○第4章・・・鳩山内閣や保守合同にかけての政権交代下における予算編成、大蔵省改革における大蔵省の対応を検証。

○第5章・第6章・・・第二次岸内閣以後の、国民所得倍増計画の制定過程や、そこに関わった大蔵官僚について分析し。

○最後に・・・1950年から現在への歴史的文脈の上にたって、「政治主導」の条件を明らかにする。

官房型官僚とは

総理府(現在の内閣府)や内閣官房・審議会事務局に出向を繰り返すことで、省内にとどまってキャリアを形成し続ける原局型官僚とは異なるキャリアを形成する。肌合いが異なり時に対立する。
出向先でさまざまな省庁の出向者と共に仕事をするため、従来の省庁セクショナリズムを超えた発想を持つ官僚の人的ネットワークが「官房」を銘打った組織には形成されており、これが局や省をまたがった政策の立案を可能にしている。

農林省における「物動派」と「農政派」や通産省における「国際派」と「民族派」の対立は、単なる派閥間の人事対立ではなく、異なる人事異動のパターンが政策志向の差を生み出していったという構造を背景にしている。

調査の政治

政党システムが流動化し、少数与党内閣へ転落した自由党の下では、特定の政治家や政治勢力に依拠しているだけでは他の勢力を抑えられず、当初の方針を貫徹できない。予算編成における省庁や与党の合意を積み上げで国会に提出して可決を待つという大蔵省主計局スタイルではこの状況を克服できず、内外の経済動向を見通したうえで、長期的な財政方針を作成し、それに基づいた予算案の経済的合理性を広く与論に訴えて、その支持を集める官房調査課スタイルが必要であった。
主計局による予算査定を、官房による財政構想の下へと置く契機となったのである。

政治家と官僚の役割

イギリス型の「政治主導」が成立するには、「原局型官僚」との提携関係に加えて、「官房型官僚」との提携関係が併存し、相互に緊張関係に立つことが条件となる。今後「政治主導」が統治のルールとして根付くためには、一旦影をひそめた官房型官僚との提携強化が不可欠。

イギリスは幹部官僚の人事権が最終的には公務員出身者の官房長官の同意が必要となっている。
時には牽制しつつも公務員が政党のパートナーとなることによって支えている。

戦後のある時期までは、日本も政党政治のパートナーとして「官房型官僚」が力を発揮していた。
戦時戦後行政の経験を内閣で積んだことで、省益に特化しない構想力を保持し、彼らの倫理は官僚を職務へと強く動機付けるだけでなく、その活動に歯止めをかける力としても作用していた。

民間企業式のインセンティブ制度を導入するよりも、「キャリア官僚」すなわち幹部公務員の行動価値としての「倫理」を再構築し、公務において市場と異なる価値を創造することが喫緊の課題である。その際に、かつて確かに存在し、現在も政治報道の背後で活動しているであろう「官房型官僚」には、多くの鍵が潜んでいる。

感想

著者の牧原出先生は2013年度国家公務員総合職試験の二次論述試験の試験委員をされています。

非常に内容の濃い本であり、上手くまとめることができませんでしたが、公務員や政治家を志す方には一見の価値のある本です。

なお、「官房型官僚」と「原局型官僚」の対立については、城山三郎著「官僚たちの夏」を読んでおけば、事例を当てはめて考えることができると思います。

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