自動車事故の保険金でモメがちな2つのパターン

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自動車保険金は出ないのがフツー (幻冬舎新書)

1. 新車を買って返せ

買って日の浅い新車同然の車を壊された場合、「新車を買って返してくれ」という方がいます。ドライバーの心情としては、ぶつけられたような車には、縁起でもないからもう乗りたくないということでしょう。損害賠償の実務では、これも無茶な要求とされます。

たとえば、700万円で買った高級車を、納車の三日後に破損させられたとしましょう。修理費は200万円です。その場合、200万円を払えというのは筋が通りますが、事故車をあげるから、同じ車を買ってよこせという主張は通りません。破損した車の損害は、修理費だからです。

長い年月乗っていて、ポンコツになっていた車を壊されたらどうなるか

こういうケースでは、車の時価より修理代の方が高くつくことがあります。事故当時の時価は30万円だが、修理すると100万円かかるといったケースです。

この場合には、車のもともとの価値自体が30万円だったわけですから、車の損害は修理費ではなく時価額を限度とされます。車がメチャメチャになって修理不能と評価される状態を「物理的全損」と呼ぶのに対し、このようなケースを「経済的全損」と呼んでいます。

被害者の中にはこの理屈を理解せず、がむしゃらに時価より高い修理費を要求したり、中古車市場で自分の車と同等の車を買って届けよと要求する人がいます。  被害者の無理解が余計な争いを招く一例です。

2. むち打ちは一か月、三か月、六か月が目安

保険会社が「出さない」「払わない」といっても、特殊な場合を除き、一円も払わないというわけではありません。少しは出します。ではどこまでは出して、どこを超えると出さないか。といっても、そんな基準が自動車保険約款に書かれているわけではありません。

例えば、追突事故の場合、被害者はむち打ち症)になります。衝撃の度合にもよりますが、損保は治療期間として、一か月、三か月、六か月を目安にしようとします。軽微な追突なら一か月から三か月まで、ふつうの追突なら六か月までが治療費などを支払うリミットです。

むち打ち損傷は、「受傷後三か月までの間に九割前後の患者が治る」ということが、一部の整形外科医からも指摘されています。

同意書にもとづく医療調査
そんなことを言われても、被害者の中には、さらに治療をつづけたい人もいるでしょう。うむを言わせず治療費をストップするために、損保はどういう手を使うでしょうか。

受傷直後、病院への治療費支払いの前提として、損保は被害者から「同意書」というものをとりつけます。これは、医療機関に対して、損保の社員や委託をうけた調査会社の者が、患者の症状について照会をし、回答をうることについての「同意」です。被害者の医療情報というものは、プライバシーに関わるうえに個人情報にあたるため、本人の「同意」が必要なのです。 「同意書」を入手している損保は、三か月目に入ると、医療機関に調査会社の者をさし向けます。

そして、こう尋ねるのです。

「被害者の**さんの症状はいかがでしょうか」
「この患者さんの場合は、まだ痛みやしびれを訴えていますので、当分、通院してもらう必要があるでしょうね」
「いつごろ『症状固定』になりそうですか」
「そんなこと分かりませんよ。患者には個体差があるんですから」
「でも先生の長年のご経験で、あと一月とか二月とか、およその目途はつくんじゃないでしょうか」
「そうねぇ。あと二月ってところかなぁ。その場になってみないと、何とも言えないが」

医師は患者の立場を考えて、曖昧にこたえます。これを調査会社の者は、「調査報告書」にまとめる際、次のように改変します。

「担当医に面談して、被害者の『症状固定』の見込み時期を尋ねたところ、面談日から二か月後(すなわち、**年*月末ごろ)との回答であった。被害者の症状は軽快に向かっており、担当医のいう**年*月末ごろが治療費打切りの目安ではないかと推定される」

なぜこのように歪曲させるか。それは調査会社の者にとって、お得意様である損保の担当者に気に入られるようレポートを書いた方が、商売上有利だからです。損保の担当者は、このいいかげんな調査報告書にもとづき、**年*月末になると、治療費の支払い中止に踏み切ります。

理由を訊かれれば、こうこたえます。

「担当医が**年*月末には『症状固定』だと断言したからです」

医師が患者の症状に即して、曖昧にこたえた内容を、調査会社の者は、かなり明確に述べたかのようにすり替える。それを読んだ損保の担当者は、「調査報告書」の内容が歪曲されていることをうすうす気づいていながら、医師が断言したかのように読み替えて、支払い拒絶の根拠にする。

これが損保の担当者たちの手口です。「同意書」など出さなければよいと思われる方もいるでしょう。確かにそうなのですが、被害者が「同意書」を出さないと、損保は最初から治療費の支払いに応じません。だから被害者は、「同意書」を出さざるをえないという事情があります。

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