トヨタ生産方式(TPS)
低成長時代にはロットを大きくし量産効果を狙う生産方式が通用しない
→TPSはムダを徹底的に排除し、量が増えなくとも生産性を上げ、原価低減をはかる生産方式
真の能力向上
現状の能力=仕事+ムダ
ムダをゼロにして仕事の割合を100%に近づける
ムダを徹底排除するための基本的な考え
- 必要なものだけをいかに少ない人間で作るか
- 工場全体で成果が上がる見方、考え方で作業者、ラインの能率アップを進める
トヨタ生産方式の二大支柱
TPSの基本思想である「徹底したムダの排除 」を貫く二大支柱
- ジャスト・イン・タイム(JIT)
- 自働化
JITと自働化の両立した現場はどこよりも強力な体質をもつ
JIT
- 後工程が前工程に必要な品物を、必要なときに、必要な量だけ手に入れる
- 前工程は引き取られた分だけ作る
→生産現場のムダ・ムラ・ムリをなくし、生産効率を向上させることができる
トヨタ自工の創業者、豊田喜一郎による発想
自働化
自動停止装置付きの機械の事
異常が発生したら機械を直ちに停止させる
→不良品の発生防止、つくり過ぎを押さえることができる
トヨタの社祖、豊田佐吉による発想
トヨタ式のつくり方
かんばん方式
JIT生産する為の運用手段
かんばんは
- 品物の引き取り情報
- 運搬指示情報
- 生産工程内における作業指示情報
かんばんが十分にはたらく為の基礎条件
生産工程を流れるようにする
生産現場に流れをつくる
工程順に一台、一台設備を並べて配置する
生産性を向上させる為、
一人一台持ち→多数台持ち→多工程持ちへと移行する
流れをつくる重要な前提条件
- 生産をできるかぎり平準化する
- 仕事は必ず標準作業を決めて行う
かんばん
JITを実現する為の管理の道具
「なにを、どれだけ」引き取るか または
「なにを、どのようにつくるか」
が示されている
かんばんの役割と使い方のルール
①引き取り/運搬指示情報
外れただけ後工程が前工程へ引き取りに行く
②生産指示情報
前工程はかんばんの外れたものを外れただけ、外れた順につくる
③つくり過ぎ/運び過ぎの防止
かんばんのない時は運ばない、作らない
④現物票として必要な作業であることの証明書
かんばんは現物に必ず付けておく
⑤不良品防止の為不良品を出した工程が痛さを感じるシステム
100%良品でなければならない
⑥問題顕在化/在庫管理の道具
かんばんの枚数を減らしていく
多工程持ち
多数持ち:一人の作業者が同じ種類の設備を複数台扱うこと
多工程持ち:一人の作業者が複数の異なる種類の設備を扱うこと
多工程持ちは少人化に直結する
生産の平準化
生産の山をできるだけ低くし、同時に谷を浅くして、流れの表面をおだやかにする事
生産現場において、製品の流れ方がバラツクほどムダは多くなる
→理由:設備、人、在庫、生産に必要な諸要素が必ずピークに合わせ準備しなければならないから
「平準化」と「多様化」
どんな順でも組み立てられる汎用性のある専用生産工程で量産効果を妨げない努力をする
→市場の多様化と生産の平準化の調和を図る
ロットを小さく、段取り替えをすみやかに
つくり過ぎのムダ、それを管理する人・土地・建物などの負担をゼロにしようという考え方
ロットを小さくしていくと、当然、前工程は段取り替えを頻繁に、速やかに行わなければならばい
標準作業の徹底
TPSではJIT生産をしている為、各工程の標準作業は簡潔に明確につくり上げなくてはならない
標準作業の三要素
①サイクル・タイム
一個、一台を何分何秒でつくらなければならないかの時間
②作業順序
時間の流れとともに作業をしていく順序
③標準手持ち
作業をする為に必要な工程内の仕掛品
流れ作業と流し作業
流れ作業:品物が流れている間に、各工程で価値が付加されていくこと
流し作業:価値が付加されていない品物の運搬
バトンタッチ・ゾーンをつくれ!
陸上のリレーのようにバトンタッチゾーンをつくり速い人が遅い人をカバーできるようにする
バトン・タッチの妙
助け合い運動
後工程が遅れた場合その人の持分をやってやり、自分の工程へ戻る
→より力強いチームワークを生み出す原動力になる
離れ小島をつくらない
作業者がポツンポツンと配置されていては、お互いを助け合うことが出来ない
仕事の組み合わせを工夫して、助け合いができるような作業配分なり作業配置する
→小人化に結びつけることができる
ラインストップを恐れるな
必要に応じていつでも止められるラインにする
→不良品を生み出すことを防止し、少ない人間で改善を重ねる
→最後に止める必要のない、体質の強いラインをつくり上げる
省力化→省人化→少人化
- 省力化:設備の導入で人の力を省く
- 省人化:従来の人数より少ない人数でやり人を省く
- 少人化:生産量に対応してどんな人数でもやれるよう定員化しない
省力化して0.9人分の工数を減らしても省人化にはならない
→1人が減ってはじめて原価低減に結びつくので省人化を達成しなければいけない
減産になったとき、省人化だけでは生産の減った分に比例して人を抜けない
→必要生産数に応じて何人でも生産ラインをつくり上げるよう、少人化を達成する知恵をしぼる必要がある
「動き」を「働き」にする
- 動き:いくら動いても、働いたことにはならない
- 働く:工程が進み、仕事ができ上がること
ムダを認識し撲滅する
作業者の動きはムダと作業に分けることができる
- ムダ
- 付加価値のない作業
- 付加価値を高める正味作業
ムダの分類
①つくり過ぎのムダ
②手待ちのムダ
③運搬のムダ
④加工そのもののムダ
⑤在庫のムダ
⑥動作のムダ
⑦不良をつくるムダ
バカヨケ
冶工具、取付具にいろいろ工夫して不良品の発生を未然に防ぐ以下の様な仕組み
①作業ミスがあれば、品物が冶具に取り付かない
②品物に不具合があれば、機械が加工を始めない
③作業ミスがあれば、機械が加工を始めない
④作業ミス、動作ミスを自然に修正して、加工を進める
⑤前工程の不具合を後工程で調べて、不良を止める
⑥作業忘れがあれば、つぎの工程が始まらない
目で見る管理
何が正常で何が異常かを明確にする
自働化→異常があったらラインまたは機械を止める
量→計画に対して進んでいるのが目で見て分かるようにする
ものの置き方、手持ち量、かんばんのまわし方、人の作業のやり方、すべての点に当てはまる考え方
アンドン
生産現場にかかげられたラインストップ表示板
目で見る管理の代表
緑色の点灯:運転中
黄色の点灯:ラインの遅れを調整しようと助けを呼ぶとき
赤色の点灯:異常を直すためにラインストップが必要なとき
5W1Hを自らに問え!
問題点を発見するには「なぜ」を5回反復する
5W:5つのWHY
1H:どうすればよいか(HOW)
「なぜ」を5回くり返せば、ものごとの因果関係とかその裏に潜む本当の原因を突き止める事ができる
原因より真因
原因の向こう側に真因がかくれている。
いつの場合もなぜ、なぜと原因を掘り下げ真因を掴んで対策をしないと有効なアクションに移ることができない
必要数=生産数
TPSにおいて生産数とは市場の必要数、売行きである
能率向上も必要数を前提として行い、つくり過ぎのムダを防止する
稼動率と可動率
- 稼動率:機械が一定時間内にフル操業した時の能力に対する現時点での生産実績を率で表したもの
→売れ行きにより下がったり、残業や交代勤務により120%稼動もありうる
- 可動率:動かしたい時にいつでも動く状態を率で表したもの
作業改善から設備改善へ
- 作業改善:作業場のルールを決めたり、配分をやり直したり、物の置場を明示したりする等
- 設備改善:設備を導入したり、設備を自働化したりする等
TPSではまず作業の手順化、標準化を徹底する(それによって大半の問題点は改善できる)
作業改善が行われてから、設備改善が行われるべきである
→設備改善が先行すると生産現場は作業改善をしないようになる
もうけるIE
IE:インダストリアル・エンジニアリング
企業組織全般に及ぶ全体的な製造技術
TPSとはトヨタ式IEであり、原価低減が可能となり、利益増につながる、もうけるIEである
仕組みとしてのTPSは第2章と付録の主要用語集を読めば理解できる。
他の章ではTPS誕生の経緯と、TPS誕生に大きく影響した社祖である豊田佐吉翁、トヨタ自動車創業者である豊田喜一郎への賞賛が書かれており、トヨタの強さは先の両名により提唱されたJIT、自働化という思想を後の世代が愚直に発展、継続させたことであると、本書から読み取れる