戦争や特攻で失われた命の価値は?究極の家族愛を描いた恋愛小説ともいえる作品「 永遠の0」

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永遠の0 (講談社文庫)

「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」

概要

「海賊と呼ばれた男」で知られる百田尚樹のミリオンヒットデビュー作。
現代人である主人公が、かつて神風特攻隊であった祖父の真実を探るため、
当時の軍関係者に次々とインタビューをして、戦争の事実を多面的に明かしていくという内容。
事実というのは捉える立場によって様々で、今まで語り継がれてきた戦争について改めて考え
させられる。

入念な文献調査やインタビューの賜物か、主人公を通じてまるで自分が戦争を
追体験しているような読後感、その上であの戦争や日本軍について、自分がどう思うか?
読む立場によって意見が分かれる1冊であることは間違いない。

備忘録(読書メモ)

・アメリカ軍は防御兵器に優れていた。零戦や特攻のように、兵士を守るという発想は日本になかった。
・「神風特別攻撃隊」は、初めは「シンプウ」であった。本居宣長の歌に由来して部隊名を命名した。
・戦後の民主主義と繁栄は、日本人から「道徳」を奪った。
・旧日本海軍の官僚は、試験の優等生がそのまま出世していく。戦争という常に予測不可能な
 状況に対する指揮官がペーパーテストで決められて、大きな減点をしないよう無難な作戦を
 遂行する。真珠湾、ガダルカナル、レイテ、現場主義の作戦だったら歴史は変わっていただろう。
・「特攻は十死零生の作戦です。アメリカのB17爆撃機搭乗員たちも多くの戦死者を出しましたが、
 彼らには生きて帰れる可能性がありました。だからこそ勇敢に戦ったのです。必ず死ぬ作戦は
 作戦では有りません。これは戦後ある人に聞いた話ですが、五航艦の司令長官であり、
 全機特攻を唱えた宇垣纏長官が特攻出撃を前にした隊員たち一人一人手をとって涙を
 流しながら激励した後、「何か質問はないか」と聞いたそうです。その時、ミッドウェーから
 戦っていたベテラン搭乗員が「敵艦に爆弾を命中させたら、戻ってきてもいいでしょうか」と尋ねた
 そうです。すると宇垣長官は「ならん」と言い放ったそうです」
 (元海軍少尉の岡部が、桜花含めた特攻の事実について語る場面。特攻の目的は勝利ではなく、
 体当たりをする事自体にあったのではないか)
・「君の政治思想は問わない。しかし、下らぬイデオロギーの視点から特攻隊を論じることは
 やめてもらおう。死を決意し、我が身亡き後の家族と国を思い、残る者の心を思いやって
 書いた特攻隊員たちの遺書の行間も読み取れない男をジャーナリストとは呼べない」 
 (元海軍中尉の武田が、戦後手のひらを返したマスコミを批判しての一言)
・自分が属す組織を盲信し、自らの頭で考えることをせず、自分のやっていることは常に正しいと
 信じ、ただ組織の為に忠誠を尽くすタイプだ。(武田が新聞記者である高山を批判する一言)
・美濃部少佐は「全力特攻」に真っ向から反対した数少ない指揮官の一人であった。
・利己主義が堂々とまかり通る現代日本を考えるとき、太平洋戦争中に宮部久蔵のとった
 行動はどう評価されるだろうか。男が女を愛する心と責任。男らしさとは何なのか。
 愛するとは何なのか。宮部久蔵を通して様々な問いかけが聞こえてくる(児玉清の解説より)

感想

自分も学生時代にインタビューや文献調査をして戦争と向き合ったが、百田尚樹氏の取材量と
比較したら、あまりにお粗末で偏った内容だったと反省せざるを得ない。
特攻隊員だけではなく、アメリカの爆撃機搭乗員、空母搭乗員、整備士や指揮官など、
様々な立場の視点から、史実に基づく戦場や人物とフィクションを巧みに融合して描き出せたのは、
膨大な取材と調査を要した結果であろう。

戦場を転々としながらも、常に生きる事を諦めなかった宮部久蔵を通して、様々な現場を
追体験しながら、命の価値や家族の大切さを思い知ることになる。
戦争文学であると同時に、究極の家族愛を描いた恋愛小説ともいえる作品。

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