いろいろな読み方のできる小説。黒王妃の書評

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黒王妃

いろいろな読み方のできる小説。

舞台は16世紀フランス。
イタリアのメディチ家から嫁いだカトリーヌは夫であるアンリ2世の死後、自分の子どもたちの王政を支えます。
書かれているのは、長男フランソワ2世と三男シャルル9世の治世です。
この頃のヨーロッパは宗教革命の最中で、各国同士の争いに加えて、国内のカトリックとプロテスタントとの争いも激しくなっている時代です。

物語は歴史を辿る描写と、その中でカトリーヌが思ったことを独白しているような部分とで構成されて、淡々と進んで行きます。
黒い衣服を好んで着たから黒王妃と呼ばれたカトリーヌ。
平民の出身でありながら、どの王族よりも国の長としての自覚があって、芯が通っていて血を見ても怯まず、堂々と迷いなく政策を進めていきます。

歴史小説というジャンルになりますが、ある意味で家族小説、とも言えるんじゃないかなと思います。
母と子どもたちの関係が描かれ、兄弟間の嫉妬が描かれます。
それから、母子家庭でもあるので、子どもが家臣に父親の姿を重ねている様子も描かれています。
やがて、その兄弟間の不満、というか満たされない心が、家庭を狂わせて、不幸を引き起こしていきます。

さらに、もう一つの側面として、恋愛小説とも言えるんじゃないかなと思います。
カトリーヌが独白している部分では、夫であるアンリ2世とその愛妾であるディアーヌ・ドゥ・ポワティエのことも語られます。
夫に愛されたい、愛妾が憎たらしい、悔しい状況が続く中で彼女はひたすら我慢しました。
辛い恋愛だったんだろうなぁと思います。

いろいろな読み方のできる小説でした。

黒王妃

黒王妃

  • 佐藤賢一

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