造り込まれた世界に引き込まれます。abさんご

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abさんご

造り込まれた世界に引き込まれます。

全文横書き、かつひらがなが多いというのが特徴ですが、
その並びを実際に見てみて、小学生の作文みたいだなと思いました。
まだ漢字を習っていない子どもはどうしてもひらがなばかりの文章になってしまう。
失礼な表現ですが、それに近いものに見えてしまいました。
けれど、読んでみると全くそれとは別ものなことがよくわかります。
ここは漢字にしないと意味が取れなくなってしまう、
ここはこの漢字を当てないと表現したいことが伝えきれなくなってしまう、
そういう吟味がなされた上での漢字/ひらがなの表記の選択をされているので、
とても知的な印象がありました。
その上、カタカナは一切なし。
カタカナになりそうな単語はきっと日本的な言葉に全て置き換えてしまったんでしょうね。
たぶんこれでカタカナがどこかにあったら一気に世界がぶちこわしになるだろうと思います。
確かに、読みにくい。
漢字を中心にひらがな、カタカナが使われている文章ばかり読むことに慣れているから、
どうしたってそれは否定できない部分だと思います。
けれど、よく造り込まれた作品だな、と思うと引き込まれます。

作品は女の子と父親の二人の生活を順番に見せていきます。
家政婦さんが出てくるので、ある程度上流の家庭なんだろうと思います。
いくつかの場面が描かれていて、その場面が連なることで作品として成り立っている感じ。
長編小説でもなければ、短編小説でもない。
そういう印象がありました。
わかりにくいので、別のものにたとえるとするならば、
印象派の画家モネの『睡蓮』に近いようなイメージ。
あの作品もいくつか並べられて飾られていて、一枚のキャンバスでも絵としては完成している。
けれど、並べられたことでようやく表現したい世界が見える、そういう作品だと思います。

abさんご

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  • 黒田夏子

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