北鎌倉駅付近でひっそりと営業する一件の古本屋の物語

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ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~ (メディアワークス文庫)

まず舞台の説明から。
北鎌倉駅付近でひっそりと営業する、一件の古本屋がある。「ビブリア古書堂」という名のその古本屋で働く女性を、五浦は高校時代に一度だけ見かけたことがある。美しい女性だった。
五浦は、とある事情で本が読めなくなってしまった男で、現在求職中。本当にひょんなことからビブリア古書堂と関わることになった五浦は、前の主人から店を引き継いだという栞子さんと共に、ビブリア古書堂に舞い込んでくる奇妙な謎を解いていくことに…。

いやはや、これは凄くいい作品でした!巷の評判が良いのが分かるなぁ。これは、本好きにはもちろんかなり楽しめるでしょうけど、本好きじゃなくてもかなり楽しめるという点が素晴らしいと思いました。
まず何よりも、ストーリーが凄くしっかりしている。これが何よりも、凄く本好きというわけではない人でも本書を楽しめる点だと思います。本について色んな知識が描かれていて(ってかそれらの知識は、僕程度の人間では追いつけないぐらい深いものなので、ちょっとレベル高すぎるんですけど)、そういう部分も凄くいいんだけど、それだけだとなかなか面白く読むのが大変。本書はまず何よりも、ストーリーそのものが凄く面白くて、だからこそつい読んじゃうんですね。
だってまず冒頭の、漱石全集にサインがしてあった、って話、まさかあんな展開になるとは思わなかったですからね。サインが書かれていた漱石全集、という出発点から、栞子さんのとんでもない発想力を経て、まさかあんなところに着地するとはなぁ。しかもこの一番初めの話が、後々にも若干関わってくる。これは、他の話でもそうで、それぞれの短編でストーリー的には区切りはつくのだけど、他の話とも緩く繋がっていく。そういう構成も非常に巧いです。
落穂拾ひの話は、ちょっとそれはさすがに栞子さん明晰すぎじゃないっすか!って思うところはあったけど、謎解きの後の余韻というか交流というか、そういう部分も凄くよかったし、論理学入門の話は、ストーリーそのものはちょっと弱いかなと思ったけど、やっぱり凄くいい話だと思いました。
晩年の話は、ちょっと凄かったですね。なるほどそうきますか!という感じでした。これは本当にストーリーが見事だったなぁ。
読みどころは他にもいっぱいあって困っちゃうけど、次はやっぱり栞子さんと五浦の関係かなぁ。
二人の距離は、縮まりそうで縮まらない。このもどかしい感じは、やっぱ最高ですよね。栞子さんは、本以外の話をする時は恐ろしく極端なまでに内向的で、ほとんど普通の会話が成立しない。でも本の話をする時は活き活きとまるで別人のようになる、という設定で、しかも美人。どう考えても変人だけど、とにかく変人が好きな僕としてはもうウハウハしちゃうような人ですね。五浦はまた変わってて、本を読むことに拒絶反応があって読めない。だから二人は、本について語りたい人と本について語られたい人という良い関係で、だけどいろいろあってお互い踏み込めなかったりすれ違っちゃったりするんだよなぁ。
しかもそういう二人の関係が、ストーリーと断絶されていないというところが素敵です。ストーリーの展開に合わせて二人の関係は浮いたり沈んだりするわけで、絶妙です、ホントに。この二人の関係がどうなっていくのかっていうのも、凄く気になりますね。

感想

あとは、やっぱり本の話が面白い!物語のテイストに乗せて語ってくれると凄く楽しい。本書を読む前に聞いていた本書の評判でよく耳にしたのは、本書で紹介されている本を読んでみたくなる、ってものだったけど、ホントそうだよなぁ、と思います。「落穂拾ひ」とか凄く読んでみたくなるし、「せどり男爵数奇譚」も読みたくなります。絶版本の話とか、太宰の初版本の話とか、全然知らない世界の話がポンポン交わされて、しかもそれがストーリーときっちり結びついちゃうところが素敵な作品だなと思います。
これは評判になるのが凄くわかる作品でした。今のところ2巻まで出てますが、これは続きが気になります!知識としては相当ディープな古書の世界が描かれていながら、その深さに怯まずに愉しく読むことが出来て、しかも本書で紹介されている本にも興味を持たされてしまうという素敵な作品です。是非読んでみてください!

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