社会が健全な人たちだけで成り立っているという前提の生活基準はおかしい「ビッグツリー」

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【新版】ビッグツリー~自閉症の子、うつ病の妻を守り抜いて~

 出版当初反響を呼んだ話題作である。

 東レ経営研究所社長の佐々木常夫さんが、自閉症の長男と43回の入退院を繰り返した妻を抱える家庭と仕事との両立を果たしてきたことを綴った自伝的作品。 
  

 佐々木家は妻と年子3人の5人家族。著者が東レの社長スタッフから社長へと登りつめるまで、自閉症の長男誕生からいじめ、長女の自殺未遂、B型肝炎のキャリア保持者である妻の闘病、うつ病を発症しての二度の自殺未遂と家庭の問題が絶えなかった。 

 その間、著者は2〜3年ごとに東京〜大阪間の転勤を繰り返している。時として家族ともども移住する場合もあったが、単身赴任も多く、金曜の夜新幹線で帰省し、長男の暮らすアパートや入院先に立ち寄り、土日で妻の病院を訪れた後に再度新幹線で職場に戻るといった具合だ。その家庭と仕事の切り替えの早さが読者の関心を強く引き付ける。

 またこれだけの問題を抱えながら乗り越えられた大きな要因として、社長級だったからこその経済力と時間の使い方の融通の効力は、語るに落ちない。

 最初は職場に家庭の問題を持ち出さなかった著者も、妻の自殺未遂事件をきっかけに迅速に対応できるよう、出世してからのち、「家庭内事情」をオープンにしている。 

 誰もが乗り越えられる問題ではなかった問題を乗り越えてきた著者だからこそ社会に訴える。 

 「社会が健全な人たちで構成されているという前提で生活基準が設定されているのはおかしいと思う。 みななにがしかのハンディや悩みを持ちながら生きているという前提に立っていたほうがいいのではないか」 

 
 その説得力が読者の心を揺さぶる。

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