科学の栞 世界とつながる本棚(瀬名秀明)の書評・感想

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科学の栞 世界とつながる本棚 (朝日新書)

先に書いておきます。今回の感想は、引用だらけになります。とにかく、引用したくなるような素晴らしい文章に満ち満ちた作品なんです!
本書は、いわゆる書評集です。しかも、大なり小なり『科学』というものと関わる本についての書評集です。
ここまで読んだ時点で、あっ私には関係ないや、と思った方。もう少し僕とお付き合いくださいませ。
まず、「はじめに」で書かれている文章が素晴らしい。引用を織り交ぜつつ、著者がどんな想いで科学に関する本の書評を書いているのか、本書を通じて何が伝わってほしいのか、ということを書いていこうと思います。
まず著者は、本書を三人の読者へ届けたい、と書いています。その三人とは、『これから進路を決めようとしている中学生や高校生』『いま社会で働きながら、読書の愉しみとともにあるあなた』『私の父』です。
中高生については置いておいて、社会人に対しては、『そうしたあなたと科学書の話ができたらと願ってこの本をつくりました』、自身の父については、『学術に専念した人生を送ったからこそ、ピュアな好奇心がその先にある。そうした父に楽しんでもらいたいと願い、私はこの本をつくりました』と書きます。
中高生に対しては、こんな素敵な文章を届ける。

『本書があなたに伝えたいのは、科学実験が好きで読書が好きな人生ってすばらしいじゃないか、ということなのです。あなたは理系に進んでも小説好きでいられるし、文系に進んでも科学を楽しむことができる。そして未来をいま真剣に考えているあなたは、おそらく自分が将来どのように社会に貢献できるかと悩んでいることでしょう。科学の本を読むということは、そうした悩みに向き合いm未来を考えてゆくことでもあるのだと伝えたい。』

その後著者は、「科学の本を読むというのは、一体どういうことなのか」と問い、それに答える。僕は元々理系で、科学的な事柄に凄く興味があったので、自発的に科学の本を読んできた。しかし、そうではない人たちにとって、科学の本というのはハードルが高い、というのも凄く想像出来る。僕は歴史が苦手なのだけど、そんな僕が、なんの情報もないままとりあえず歴史の本を選んで読んでみろ、と言われるようなものだろう。
著者は、科学の本を読むということは、ちょっと違った体験をもたらす、と書いています。

『もとの生活に還るための、日常を取り戻すための本と違い、本書に登場する科学書の多くは、むしろ読むとあなたに新たな疑問や謎を残すでしょう。本のページを閉じた後、世界はもとに戻るのではなく、むしろ変化して見えるでしょう。世界があなた自身にチューニングされるのではなく、いままで少しばかり社会のしがらみにとらわれていたあながた、本来の宇宙に調律される、それが科学の本を読むということなのだと思います。』

『そうした豊かで複雑な私達の心のあり方が、宗教観も生活習慣も違う異国の人々に想いを馳せ、見ることさえできないはるかな宇宙のイメージに胸踊らせる、人間ならではの読書の歓びを産み出すのです。』

『自由を求めて社会を変えることを革命と呼びますが、科学の本を読むことは、ささやかな娯楽であると同時に小さな革命なのだと思います。この世界を、宇宙を見るために、自分が少しだけ変わるのですから。』

そうした、科学書を読むことの素晴らしさを伝えたあとで、著者は、科学の本を読む歳のコツやスタンスを教えてくれる。特にそれまで科学的な本と触れて来なかった人には、科学の本とどう向き合ったらいいか悩むことだろう。

感想

外国人作家の小説でも同じようなことがありますよね。訳者で選ぶ。僕はこの矢野真千子さんって人を知らなかったので、覚えておこうと思いました。僕が信頼している訳者さんは、青木薫さんという方で、この方が訳している作品はほぼ無条件で信頼するようにしています。
今年、是非手にとって読んでみて欲しい作品です。いや、どうせなら、今は読まなくてもいい。でも、著者がどこかの書評で書いていたように、本書をいつも目に見えるところに置いていて欲しい。そう思える作品です。「はじめに」でも書かれていたけど、本書に収録されているかどうかが重要なのではありません。あなたが未来に手に取るかもしれない本、その本に興味を持つことが出来るようにアンテナを張っておく、そのための作品でもあります。科学書の書評集だから、というのではなくて、書評集として素晴らしい作品だと感じました。是非読んでみてください。

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