アクセルを踏みこめ(原マサヒコ)の書評・感想

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アクセルを踏みこめ (経済界新書)

まず、本書に書かれている、著者の略歴を引き写してみようと思います。

『「平民宰相」と呼ばれた第19代総理大臣・原敬の子孫。
高校時代の成績はビリからNo.1で、次第に学校にも行かなくなり、誰よりも早くクルマの免許を取って大好きなクルマと戯れる。
あげく親からも勘当されて、一人暮らしを余儀なくされつつも、メカニックの世界でNo.1を目指しつ自動車整備士の視覚を取り、トヨタ自動車に入社。ディーラーメカニックとして勤務しながら5000台もの自動車修理に携わる。
その後、整備技術を競う「トヨタ技能オリンピック」で最年少の23歳にして見事優勝を果たしトヨタNo.1の座に。また、「カイゼン」のアイデアを競うアイデアツールコンテストで2年連続全国大会出場。
その後、活躍の場をIT業界に移してからも、PCのサポートを行なっていたデルコンピュータでは「5年連続顧客満足度No.1」に貢献。現在もITサポート企業に所属し、活躍している。』

そんな著者による、自伝と言っていいのかな、失敗や挫折ばかりだった自分の人生を振り返り、自分の経験を踏まえた上で、既に働いている人、そしてこれから社会に出ようとする人に示唆を与えるような内容になっている。
著者は、高校時代はまったくダメな男だった。著者には、先天的なハンディもあった。多汗症であり常に手のひらが汗にまみれていたことと、色弱でありはっきりとしていない色の区別がつきにくい、ということだ。このハンディも原因の一つとなり、著者は学校でいじめられたり、友達が出来なかったりする。次第に学校に行かなくなり、親にも勘当される。
自動車だけは大好きだった著者は、ずっとクルマに触っていられるだろう、と思って自動車整備士を目指す。
が、なかなかそう甘くはなかった。
著者は名も知れない専門学校を出た後トヨタに入ったのだが、同期にトヨタの自動車学校を出た男がいた。知識の差もあるが、やはりトヨタには同じ自動車学校出の先輩も多く、会話でも取り残されていく。新人は誰でもそうだが、雑用ばかりでクルマにも触らせてもらえず、高校時代とあまり変わらない毎日を惰性で過ごしていくことになる。
そんな著者を変えたのが、先輩のベテラン整備士・石田さんだ(本書は、出てくる人物は基本的に仮名らしいです)。
石田さんは、整備の鬼のような人だった。その動作は一切のムダがなく、また整備士のプロとして、そしてお客さんと関わる一人のサービスマンとして、常に高みを目指している人だった。
色んなことがありふてくされ、また仕事にもばらつきがあってまだ全力を出せていない頃に、著者は石田さんに何度も怒られた。石田さんはよく、クルマのたとえを使いながら著者を諭す。ほら、クルマだってこうだろ、というわけだ。石田さんに言葉を少しずつ噛み締めるようにしながら、目の前の仕事を少しずつ丁寧にこなしていく内に、著者は次第に、整備の世界でNo.1になろうと決意するようになる…。
というような流れの、自伝風自己啓発本、という感じでしょうか。

感想

こんな感じで著者は、石田さんからのアドバイスを自分のものにしていきながら、辛い環境に耐え、自らの先天的なハンディを乗り越え、少しずつ前に進んでいく。そしてやがて、トヨタNo.1の座にたどり着くのだ。
本書で描かれていることは、どれもシンプルなことばかりだ。それらは、シンプルだからこそ日常の中に紛れ、シンプルだからこそ記憶の中に紛れてしまうような、そういうことだ。そういう小さいけれど大切なもの、僕たちが仕事の風景の中に無意識の内に紛れ込ませてしまっていることを、目に見える形で描き出してくれている。当たり前のことだからこそ毎日続ける意味があり、当たり前のことだからこそ毎日続けることが難しい。
個人的には、もう少し読み物として洗練されているといいなぁ、という感じはしたのだけど、まあ新書という形態を考えるとそう悪いものでもない。

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