世界が賞賛した日本の町の秘密(チェスター・リーブス)の書評・感想

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世界が賞賛した日本の町の秘密 (新書y)

本書は、カルチュラル・ランドスケープ史家(ってなんなのかわかってないで書いてますけど)であるアメリカ人の著者による、日本のママチャリ文化の素晴らしさ、公共交通の素晴らしさ、そして何よりもママチャリや公共交通によってどことでも接続することが出来るその町そのものに対して惜しみなく賛辞を送り、日本人がその良さになかなか気づいていない事柄について啓蒙するような内容になっています。
著者はアメリカの大学の教授ですが、フルブライト奨学金を得てここ20年間の間に数年日本に滞在しています。日本に滞在中は、著者が『自転車町内(自転車だけで生活に関わるあらゆる場所へとアクセスできる町)』と呼ぶ町に住み、実際にママチャリに乗り、その素晴らしさを体感し続けてきたと言います。
本書は、大雑把に分けて、前半はママチャリの話、そして後半は日本の都市や公共交通についての話になります。
前半で著者は、これでもかというくらいママチャリを褒め倒します。まず、著者のママチャリに対するスタンスの中で、これは面白い視点だなと思ったものを抜き出してみます。

『大げさな話にするつもりもありませんし、例外もあるでしょう。しかし、ママチャリは環境にやさしいだけの地域交通手段ではありません。ママチャリは、日本の伝統的な部屋のスケールを決定させた畳と同様の尺度(モジュール)を、日本のコミュニティにもたらしたのです。』

これはなるほど、という感じがしました。日本にある自転車町内は、狭い道が多く自動車の進入に対してある程度抵抗が出来、また自転車で移動することで、ママチャリのかごに入る分の買い物しかせず必要以上の買い物をしなくなるし、自動車という受動的な乗り物にではなく、自転車という能動的な乗り物に乗ることで運動不足も解消されるといいます。この話はすべて、著者が生まれたアメリカでの生活と比較して語られます。アメリカではどこへ行くにも自動車で、スーパーにはどうせ自動車に積むことになるからと大きなショッピングカートが用意されている。それで不用意にたくさん物を買ってしまい、それを収納するために大きな冷蔵庫が必要になる車を運転するだけだから運動不足になり、肥満になる。また大量のエネルギーを消費する自動車に対して、自転車は省エネです。また子供がいる家庭であれば、自動車で移動する際にはチャイルドシートに縛り付けられて視界も狭まってしまうのに対し、自転車での移動であれば人や環境との接触を犠牲にすることなくモビリティを確保することが出来ると指摘しています。それに、ママチャリに乗って町中を走ることで、常に何か発見をすることが出来る。アメリカでは、洗濯物は乾燥機で乾かすことがほとんど常識のようですが、著者はママチャリで町中を走ることで外に洗濯物を干すことの素晴らしさを知り、以後アメリカでも洗濯物は外に干すようになったとのことです。著者は日本に来る度に、洗濯ばさみ付きの小さな物干し竿をアメリカ人の友人への贈り物として購入しているそうですよ。
普段日常的にママチャリに乗って移動している僕らにはすぐには実感できませんが、諸外国の現状と比較することで、ママチャリがいかに素晴らしい乗り物であるかということがなんだか伝わってきます。

感想

本書の中には、地方の人ほど糖尿病になりやすい(車に乗ってばかりで運動しないから)というデータが発表されたことがある、という話も出てきます。まあその真偽はともかく、確かに車ばかり利用していれば、いずれ公共交通はアメリカのように廃れて行ってしまうでしょう。とはいえ、今の日本の地方では、なかなか車なしの生活というのも難しいはず。その辺りのバランスをどうしていくかというのが重要になってくるのだろうなと感じました。
読めば読むほど日本という国の良さが染み出してくる作品です。僕らにとってあまりにも当たり前で、日常でしかない様々な出来事が、世界に目を向ければ実は非常に特殊だったということが凄く分かりやすく説明されます。ママチャリという世界に誇る文化を失わないためにも、僕らはもっと町やコミュニティやそうしたものに関心を持っていかなくてはならないのだろうな、と感じました。是非読んでみてください。

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