偉大なる、しゅららぼん(万城目学)の書評・感想

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偉大なる、しゅららぼん

日出涼介は、高校生になるにあたり三年間、実家のある湖西(琵琶湖の西周辺の地域)から、湖西と湖東のちょうど中間くらいにある石走にある日出本家に赴くことになった。
これは、涼介の父も、そして兄も経験していることだ。涼介の父は日出家から離れごく一般的なサラリーマンとして働いているが、兄はその力を使ってマジシャンとして活躍している。
そう、涼介には、日出家に伝わるある特殊な力が備わっている。これから三年間、日出本家で修行をすることで、その力をきちんと使いこなす術を学ばなくてはならないのである。
石走にある日出本家は、石走城に住んでいる。城だ。日出本家は日本で唯一、江戸時代から現存する本丸御殿で実際に生活をしている家族だ。
日出本家には、変わった人間が多い。
みなからパタ子さんと呼ばれる女性は、屋敷中を掃除してはいるものの、一体どんな理由で城にいるのかまるでわからない。城にいる人間ではまだまともそうなので色々聞くのだが、その度にはぐらかされてしまう。清子という日出本家の長女は、城の中でほとんど見かけることがないのだが、初めて会った日は白馬に乗っていた。そのインパクトだけで十分である。現当主である淡九郎はなかなか怖い人物で近寄りがたい。
しかし何よりも、日出本家の跡継ぎであり、涼介と共に同じ高校に通うことになる淡十郎の存在感はなかなかのものだ。
日出本家は、日本の財界にも大きな影響を持ち、こと本拠地である石走の町における影響力は絶大だ。日出家の者と知ると、人々は警戒し恐れる。その中にあって、淡十郎への評判はなかなかのものだ。これまで、自分の障害になるものはすべて排除してきた。少なくとも石走において、淡十郎の思い通りにならないことなど何もない。そんな淡十郎と共に学園生活を送らなくてはならない涼介は、大小様々な迷惑を被ることになる。
石走の地には、日出家と同じく特殊な能力を持つ棗家が存在する。様々な理由によりその勢力が衰えてしまった棗家ではあるが、この両家は過去1000年以上に渡って、各自の持つ謎めいた能力を巡って不毛な争いを繰り返し続けてきた宿敵同士なのだ。
淡十郎と涼介と同じクラスに、棗家の跡取りである棗広海がいる。淡十郎と広海の間のちょっとした誤解、そして恋を巡るささやかないざこざが、両家の1000年の歴史には存在し得なかった新たな展開を呼び覚ます…。
というような話です。
相変わらず万城目学、面白い小説書くなぁ!過去、京都や大阪や奈良など、町自体が長い長い歴史を持ち、どんなことが起こってもまあ不思議ではないかもしれない、というなかなか特殊な環境の中で作品を描き続けてきた万城目学だけど、本書は琵琶湖である。確かに琵琶湖も、日本の中でかなり特異な存在感を持つ場所だと思うし、舞台としては抜群だと思う。でも、これまでのような、町そのものに強い歴史を持つわけではない舞台でこれだけ面白い作品を書けるんだから、やっぱりさすがだよなぁと思います。
先に本書の欠点を一つ挙げておくとすれば、それは展開の遅さ。確かに、人気作家になったからこそ許される(ある程度物語の立ち上がりが遅くても読んでもらえる)やり方だと思いますけどね。大体、前半半分は舞台設定の説明だと思ってもらっていいかもです。もちろん、そこは万城目学、その舞台設定の部分でも小ネタを繰り出して色々と面白く話を進めていくんだけど、でも肝心の物語はほとんど展開しない。本書の核となる物語がきちんと展開するのは半分まできてようやくという感じで、この展開の遅さはやはり欠点に挙げざるを得ないかなぁ、という感じがしました。

感想

個人的には、日出家の長女でとんでもない力の持ち主である清子が結構いいキャラだなと思います。前半ではほとんど出てこない謎のキャラなんだけど、後半ではもう清子を中心に回っていると言わんばかりの大活躍で、清子が周りをどれだけ振り回すかってのはなかなか面白いです。あと、棗広海の妹の話がもう少し物語に絡んでくれたらよかったなぁ、という気がしました。ほとんど描かれないから分からないけど、結構いい感じのキャラとして描けそうな気がするんだよなぁ。
なかなか物語の核心部分に触れられないので、巧く感想が書けないのだけど、万城目作品らしく、読んでてて凄く楽しい小説です。本書の場合、前半は舞台設定の紹介で、半分を超えないと核となる物語は展開して行かないということさえ頭に入れて読めば、ものすごく楽しめる小説ではないかと思います。是非読んでみてください。

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