真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒(大沼紀子)の書評・感想

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真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒 (ポプラ文庫)

本書は、シリーズ第二弾です。とりあえず作品全体の設定をまず書いておきます。
ブランジェリークレバヤシは、真夜中にだけ開くちょっと変わったパン屋さん。オーナーだけどパンは作れない暮林と、パン作りの腕は抜群だけど口は悪い弘基の二人が切り盛りしている。この二人、実はある一人の女性となかなか複雑な関係にあるのだけど、それはとりあえず内緒。
そこに、高校生の希美が転がり込んできた。希美は、実は暮林家とはまるで関係がないのに、そのまま居候してしまったのだ。
真夜中に開いているパン屋さんには、なんだかちょっとした問題を抱えた人たちがたくさん集まってくる。彼らの問題に少しずつ関わりあっていきながら、誰もがお互いに傷ついた羽を休めている…。
というような感じ。
というわけで本書の内容紹介です。
開店直後のブランジェリークレバヤシに、一人の女性客がやってきた。しかしその人は、正確な意味ではお客ではなかった。佳乃と名乗ったその女性は、弘基の存在を確かめると、いきなり婚姻届を見せつけた。そこには、佳乃と弘基の名前が書いてある。
「約束したんだから、結婚しよ!」
そう言い寄る佳乃に一同面食らう。15年前の約束を持ちだしたようだけど、弘基はそれには取り合わない。どうやら追われているらしい佳乃は、しばらくの間だけでもいいから置いてくれないかというと、暮林があっさりとOKしてしまう。そんなわけで佳乃は、希美と一緒にブランジェリークレバヤシの二階で寝泊まりすることになったのだ。
しかしこの佳乃という女、なんとも怪しい。
ブランジェリークレバヤシは、佳乃が店に立つようになってからというもの、男性客がごそっと増えた。確かに佳乃は美人だ。しかしそれ以上に、馴れ馴れしいというか、人との距離がちょっと近すぎるのだ。暮林にもベタベタしているのを見て、なんだか希美は嫌な気分になってしまう。
まあ、それだけならまだいい。ところがこの佳乃、唯一持ってきたボストンバッグの中身がなんと札束の山だったのだ!
佳乃を探す男たちの影も見え隠れし、希美が不信感を募らせていると、変態脚本家の斑目がちょっとした事態に巻き込まれていて…。
というような話です。
いやはや、面白かったなぁ!シリーズ一巻目より格段に面白くなっています。こんな表現をするとちょっと誤解されるかもだけど、シリーズ一巻目は、作中で関わることになる色んなキャラを紹介する巻、そして二巻目である本書が、愉快なキャラクター達が揃った上でシリーズ始動、という感じがしました。一巻目ももちろん面白いんですけど、連作短編だった一巻より長編である本書の方が、物語的にも濃密な感じになっていて、凄くよかったです。
大沼さんはどんどん、人への眼差しを描くのが絶妙になっていくな、という感じがします。前巻でもそれは現れていましたけど、本書でそれがより開花したな、という感じです。
誰かを理解すること、そして誰かを救うこと。本書で強く描かれるのは、この二つです。
本書で中心的に描かれるのは、佳乃だ。佳乃は、周囲の誰にもその理由を推察できないような動機によって、金持ち相手に詐欺を働き続けている。佳乃という存在をどう理解するか、どうやって救うか、というのが、佳乃にまつわる様々な謎や出来事と共に本書のメインになっていくのだけど、でも決してそれだけではない。

感想

本書を読んでいると、弘基や暮林の想い出の中の美和子の話が少しずつ語られて行って、美和子という女性に会ってみたいなという気に凄くさせられます。
本書単体でも読めなくはないでしょうが、是非一作目から読んで下さい。誇張ではなく、大沼さんは作品を出す度にどんどんとパワーアップしているという感じがします。裏の内容紹介に『不器用な人たちの、切なく愛おしい恋愛模様を描き出す』って書いてあるけど、確かに恋愛要素もあるけど、それ以上に、誰かを想う気持ちの強さとか、本当の優しさとか、そういうものが描かれている作品だと思います。是非読んでみてください。

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