オックスマート!震える牛(相場英雄)の書評・感想

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震える牛 (小学館文庫)

体調を崩し、所轄署から本庁へと異動になり、捜査一課継続捜査班という、迷宮入り濃厚の目立たない未解決事件を担当する部署に配属された田川は、上司である宮田から厄介な案件を任される。事件自体は、複雑ではない。しかし、中野で起こったその殺人事件を担当したのが、同じく未解決事件を担当する部署であるが、捜査一課継続捜査班よりも大事件を担当する特命捜査対策室(コールドケース)の現理事長である矢島だった。不良外国人による強盗殺人という見立てで捜査を開始し成果が上がらなかった案件で、だから特命には持っていけない。
事件は二年前、「倉田や」という全国チェーンの居酒屋で起きた。全身黒ずくめで目出し帽を被った男が、「マニーマニー」と言いながら売上金を強奪し、店員に斬りつけ、また店内にいた二人の客、獣医師の赤間と産廃処理業者の西野の二人が殺された事件だ。捜査を開始した田川はすぐに、当時の初動捜査が杜撰だったことを見抜き、いくつかの証言から、強盗殺人ではなく計画殺人だったのではないかという疑いを強めていく。
一方、全国に巨大SCを展開する大企業・オックスマート。切れ者だが傲慢な会長と、ボンボンとして育ってきた御曹司を影から支え、汚れ仕事を一手に引き受けてきた滝沢は、日々振りかかる火の粉をやり過ごしつつ、様々な案件を進めていく。
中でも一番頭の痛い問題は、元大手新聞社に在籍し、現在はインターネットメディアで、新聞には書けない様々な企業の裏側を抉り出す記事で好評を博している鶴田という女性記者だ。大抵のマスコミや、その他様々なところに金をばらまいているが、独立系のネットメディアの記者である鶴田だけは、どうにも抑えが利かない。鶴田は、オックスマートにとって致命的になりかねない情報を追っていて、滝沢もその対処に苦心することになる。
田川は、ほんの少しずつであるが、着実に捜査を進展させていく。その過程で、とんでもないネタがポロポロこぼれ落ちてくる。一方、オックスマートが抱える問題も深い。成長し続けなくてはならないという状況の中で、ギリギリの危ない線を渡りつつ、どうにかしのいできた。様々な批判がある。巨大SCは地方の町を破壊するという話は、捜査であちこちの地方を訪れる田川にとっても強く実感されることだ。
田川が追う事件が、鶴田が追う線と重なり合い…。
というような話です。
なるほど、これはなかなか凄い作品だなと思います。僕が感じた『凄さ』は、小説的な部分に対してはそこまで強くはありません。ただ、本書からにじみ出る問提起については、相当に凄さを感じました。
まず小説的な部分から色々書きましょう。これは結構個人的な好みの問題なんだけど、僕は本書のような、刑事が少しずつ細い線を辿って着実に事件を解決していく、みたいなミステリがそこまで得意ではありません。本を読み始めた頃は、結構ミステリばっかり読んでいて、その頃はそういうタイプの作品も全然普通に読んでたんですけど、色んな本を読む中で、こういうタイプの作品は徐々に読まなくなっていきました。これはただの好き嫌いの話なんだけど、少しずつ着実に物語が展開していくことに面白さを感じる人がいるんだろうなと思うけど、僕はそういう点にちょっと退屈さを感じてしまう傾向が最近はあります。
とはいえ、本書は結構面白く読めました。それはきっと、本書の設定が、「迷宮入りしそうな未解決事件を扱う刑事」というものだったからかな、という感じがします。

感想

明らかに、Aの方が悪質だ。しかし、実際マスコミが報じる際は、恐らくオックスマートの方が大々的に取り上げられるだろう。何故なら、オックスマートの方が大企業で、マスコミは消費者がそういうネタが好きだと思っているからだ。本書でなされる問題提起は、やはり大資本だけを悪とすることは難しい。企業と消費者は両輪だ。片方だけ悪いとするのは無理がある。状況をカイゼンしたいと思うなら、まず僕ら消費者が賢くなる必要があるだろう。
僕らが生きている社会がどんな風に成り立っているのか、その一角を見せてくれる作品です。こういう社会に既になってしまった今、僕ら個人に出来ることがなんなのか考えることはなかなか難しいけど、そういうことを考える人が増えるという事実そのものが状況を大きく改善するかもしれない、とも思います。是非読んでみて下さい。

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