書店ガール(碧野圭)の書評・感想

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書店ガール (PHP文芸文庫)

本書は、ペガサス書店吉祥寺店(実在しない)という新刊書店を舞台にした、女性のお仕事小説です。
物語は、なかなか波乱万丈なところから始まる。
副店長である西岡理子は、同じ店の若くて美人な社員・北村亜紀の結婚式に出席している。店の女性で参加したのは、理子だけだ。亜紀は昔から、同じ店の契約社員で、女子スタッフから人気のあった三田孝彦と付き合っていた。それだけでも店内の女性スタッフのやっかみがあったのに、さらにその上亜紀は、あっさりと付き合う相手を乗り換え、サイン会で漫画家と一緒に店にやってきた編集者と結婚した。その不満が、未だ女性スタッフの中から消えない。独身の理子は理子で、若くて美人な亜紀に対して反発心があるのだが、ちょっとした事情があって結婚式に出ることにした。付き合っていた相手と別れたばかりの理子にとっては、なかなか辛い場だ。
ほんの些細な行き違いが大事になって、結婚式の場で理子と亜紀はやりあってしまう。それまでも決して上手く行っているわけではなかったが、それをきっかけにして二人の関係は決裂してしまう。
とはいえ、お互い同じ店で働く者同士だ。仕事には影響を与えたくない。と思っていても、周りがそうはさせてくれない。二人の思惑とは違い、理子と亜紀の仲違いはどんどんと大きな影響力を持ち、仕事上でも様々な支障をきたすことになる。
そもそも理子と亜紀では、性格も考え方も違う。書店員としてのあり方の理想が違うので、売り場でも様々に対立してしまう。その対立が、個人的なわだかまりと相まって、余計状況を悪化させてしまう。
母を亡くし、退職した父と二人暮しの理子は、父親の面倒を見る負担について、頭を悩ませることが増えた。一方新婚の亜紀は、新雑誌創刊のために超絶的な忙しさの中にいる夫と、ちょっとした考え方の違いから口論めいた感じになってしまうことが増えた。
お互いがそれぞれの悩みを抱える中、ペガサス書店吉祥寺店をとんでもない事態が襲う。きっかけは、理子がペガサス書店で初めての女性店長に就任することが決まったことだった…。
というような話です。
いやはや、やっぱり面白かったなぁ。「やっぱり」というのは、実は僕は本書の親本である「ブックストア・ウォーズ」という作品も読んでいて、文庫化に当たって再度読んでいる、ということなのです。
さて、本書の良さをどう伝えようか。
というのも、僕自身が書店員であるという事実が、何らかのバイアスとして先入観を与えちゃうよなぁ、という危惧があるのです(余談ですが、僕は本を売るということについて、「それを手に取る人がどんな先入観を抱くか」という部分を一番に考えてしまいます。そのタイトルや装丁から、あるいは僕の展開の仕方からどんな先入観を抱くか)。
まずは、当たり障りのないところから攻めて行きましょうか。
本書は、お仕事小説として素晴らしく面白い。もちろん、僕が書店員だからという部分はあるでしょうけど、それは後でまた書きます。
本書では、「ザ・女の闘い」というようなものが結構メインで描かれる。そもそもまず、理子と亜紀という、お互いになかなか我が強く、お互いに引かない性格の二人の直接的なバトルというのも凄く面白い。この直接のバトルは、仕事に関わる部分と、相手への個人的な嫌悪感が、ストーリー上非常に巧く入り混じった形で展開されていく。仕事において理子が亜紀を注意しなくてはいけない。

感想

『ただの印刷物がちゃんと本や雑誌になるのは、人に関心を持たれたり、読まれたりするからじゃないかと思うんだよ。俺達がこうして一冊一冊触って、書棚に置けるようにしてはじめて雑誌は雑誌になる、そんな気がするんだ。だから俺達がやってるのは、雑誌としての命を吹き込んでいるんじゃないか、ってね。そう思うと、なんだかこういう作業にも意味がある気がしないか』

女性のバトルを通じて、書店業界というなかなか特集な環境を実に見事に切り取り、さらに、女性が社会の中で働くということについて考えさせる作品だと思います。ストーリー展開が非常に面白いので、一気読みさせられてしまうのではないかと思います。是非読んでみて下さい。

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